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2005年12月 1日 (木)

女優の伝記

「女の一代記」第3夜 『悪女の一生~芝居と結婚した女優・杉村春子の生涯~』
昔、秋吉久美子主演のドラマで田中絹代物語とか、吉永小百合の映画「映画女優」(同じく田中絹代)がけっこう面白かったという記憶があり、成宮寛貴も出るということで、見ちゃいました。
物語はものすごーく駆け足だったけど、米倉涼子は役に合っていたと思う。
特に、3人目の夫の病室のシーンは、感情の動きの表現も良かったし、面差しもそこはかとなく杉村春子に似ていて、「若く見える53歳」に見えないこともない、という感じだった。
欲をいえば、着物はもう少し柔らかく着こなしているとよかったけど。

一応、杉村春子はテレビ、映画で見たことはあるのだけれど、私が見たのは全部、三人目の夫を亡くして以降の杉村春子だったのですね。
なんとなく杉村春子、田中絹代、ヴィヴィアン・リー、阮玲玉の生年と没年を検索してみたら、みんな同世代ではないですか。その中でも杉村春子は一番年上で、しかも長命だった。
杉村春子 1906(?)-1997
田中絹代 1909-1977
阮玲玉(ロアン・リンユィ) 1910-1935
ヴィヴィアン・リー 1913-1967

なんでこの人たちかというと、私が伝記を読んだり映画やドラマを見たことがある女優という、ただそれだけなんだけど、「舞台女優」杉村春子、「映画女優」田中絹代、「伝説の女優」阮玲玉が同じ時代を生きていたんだというのが、なかなか感慨深いです。
一番年下の"スカーレット"ヴィヴィアン・リーは、杉村春子とは「欲望という名の電車」のブランシュが当たり役だったという共通点があって・・・といいつつ、これは映画も舞台も見ていないんだけれど。痛ましくて。
杉村春子が芝居と結婚した女優なら、田中絹代はいわば映画と結婚した女優で、25歳の若さで自殺した阮玲玉以外は、現代よりもずっと窮屈な時代を生きながら、したたかでたくましい人たちだったと思う。
今の時代ならば短命といえる54歳で亡くなったヴィヴィアン・リーも、W不倫に略奪結婚と私生活は情熱的だったし、アカデミー主演女優賞2回受賞の栄光を手にしていて、病気(肺結核)の影響で美貌の衰えは早かったとはいえ、若い頃は掛け値なしの「絶世の美女」。幸せだったかどうかはわからないけど、常人には許されない歓喜を味わったということだけはいえると思う。

「阮玲玉(ロアン・リンユィ)」は同名の映画を見ていて、「3人の男」が出てくるところは杉村春子のドラマと同じといえば同じかも。
ただ、ロアンの場合は、最初に出会った男性が甲斐性なしのヒモ、2番目の男性との関係が姦通罪に問われることになり(しかも告発者は最初の男)、最後の男(映画監督)も主演映画で彼女を世間の矢面に立たせるだけ立たせて守ってはやれず、追い詰めてしまった。
姦通罪の告発や世間からのバッシングが、25歳ではなく30歳くらいになってからのことなら、もっと強くなっていて、もしかしたら乗り越えられたのかもしれないけど。
ちなみに、「阮玲玉(ロアン・リンユィ)」は、1930年代の上海が舞台で、衣装、セット、音楽が美しく、私がDVDとサントラの両方を持っている唯一の香港映画だったりします。

話を杉村春子のドラマに戻すと、できれば太地喜和子の事故死のところまで見たかったけど、そうすると米倉涼子とソニンで最後まで見せるのはさすがに厳しく、「3人の男」という部分もぼやけるから難しかったんだろうか、なんてことを考えた。

今は、いろいろなことが許される分、ドラマチックに生きることは難しくなっているけど、ドラマチックに生きた人たちは、別にそれを狙っていたわけじゃないし、杉村春子や田中絹代の時代に生まれたいかといえば、それは「謹んでお断りします」。

ところで、成宮寛貴演ずる石山医師登場の場面は、若く見えすぎて「医者に見えなーい」と思わず苦笑。
ただね、あの場面に関しては成宮君も眉間のシワなどお芝居がちょっと微妙だったけど、台本と演出もどうかと思った。「正直いって原因不明の難病だ」「はっきりいってわからない」なんかは、そもそも台詞が不自然だったし。この台詞では、"財前教授"や"里見先生"が口にしたとしても、「医者らしいリアリティを持たせる」のは難しいぞ。
でもまあ、その次の場面はちゃんと「往診中の医師」らしく見えたし、演技の比重が医師から「15歳年下の恋人・夫」に移ってからは良かったと思う。
どんなふうに描くんだろうと思っていたキスシーンは、成宮君が若く見えすぎることが逆に効果的で、端整で儚げな顔と米倉涼子の「強さ」のコントラストが印象的だった。

ちなみに第二夜は、ザッピングしながらところどころ見ていたのだけど、劇中の越路吹雪の歌をほとんど知っている自分に気づいてしまいました。母の影響、恐るべし。

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