功名が辻と国盗り物語
関東圏では深夜に「木更津キャッツアイ」を再放送中。
未見だったので録画して見ていますが、第7話で思いがけずガブとメイの声優(たっくんコンビともいう)の2ショットを見て爆笑してしまった。
この2人、第8話でも一緒に登場する場面があって、中村獅童がとんでもなく凶悪な顔で笑える。
成宮くんもカメラが引いた目立たないところで細かい演技をしているので、それもたいへんおかしゅうございました。
ところで、来年の大河ドラマ「功名が辻」のガイド本を読みました。
足利義昭役の三谷幸喜はイメージ的には合うと思うものの、本職の役者ではないので、このキャスティングはちょっと疑問を持っている。
でも、インタビューの中で三谷幸喜が大河ドラマ「国盗り物語」で伊丹十三が演じた足利義昭を挙げて、「伊丹さんが演じられた役ができるのならと引き受けた」というコメントしていたのは、なんとなく嬉しかった。
大河の「国盗り物語」、出演者は軒並み好演か名演といってもいいけど、その中でも伊丹十三は出色。
足利義昭の高貴な生まれの人独特のノー天気さ、権勢欲、プライドの高さ、無力さetc.複雑な人物像を過不足なく演じていた。歴史の表舞台から去るシーンの、自分を担ぎ出しておきながら(政治的に)葬る役目をになってしまった明智光秀を見やる諦観とも思いやりともつかない表情は圧巻。
伊丹十三はけっこう小芝居もする人で、光秀に背負われて山道を逃げるというシーンでは、喘ぎながら「揺られて苦しい」という表情をしていて、そりゃニコニコとかボーっとするのは論外としても、そこまで凝るかーと思ったくらい。
歴代の大河ドラマの中では、この「国盗り物語」、「花神」が特に好きなのだけど、どちらも司馬遼太郎原作で、脚本家も同じ大野靖子という人です。
どこが良いかって、なによりも原作に対してきちんと敬意が払われているところが良いです。
で、最近の大河ドラマで憤懣やるかたないのは、この「敬意」がないこと。
脚本家のオリジナリティだの主張ばかりが鼻につくようなドラマが多くなってしまっている。
それでもオリジナル脚本で暴走するのはまだいいけど、自分の好きな原作を台無しにされたときのやるせない気持ちといったら。
ええ、「徳川慶喜」のことです。
四賢侯が悪酔いした慶喜を介抱するというシーンが「(オリジナルキャラクターの)幼馴染の芸者と一緒に酒を飲む」になっていた時は、開いた口がふさがらなかった。原作の「最後の将軍」でも印象的な場面だったのに。
オリジナルのキャラクターや場面で原作に足りないところを補足するのはいいけど、面白い場面をつまらない場面に差し替える意味ってどこにあるのかと、今思い出しても腹が立つ。キーーーッ。
しかも、徳川慶喜役のモックンははまり役だったから、本当にもったいなかった。
「功名が辻」も原作は司馬遼太郎だけど、くれぐれも「徳川慶喜」の轍を踏まず、原作へのリスペクトを忘れないドラマ化を希望。
ドラマと原作は別物とはいっても、大河ドラマはちょっと特殊だし、奇を衒ってつまらなくなるのが一番目も当てられない。それだったら、多少退屈でもオーソドックスなほうが良い。
原作ありの大河ドラマ--というか歴史ドラマが、オリジナル脚本のドラマと違うのは、原作者の歴史観が非常に重要であるということ。視聴するほうもそこを見るわけだから。
もしも原作者の史観を無視もしくは捻じ曲げて脚色するのならば、原作のタイトルは外して、最初からオリジナル脚本として書くべきだと思うんである。
ただ、その場合、一脚本家の歴史観を一年間見せられるのは辟易っていうのはありますが、個人的には。やはり、いくら綿密に資料を調べていたとしても、原作の小説を書くのとは費やす時間と労力が違うと思うから。
ガイド本によると、「濃姫と明智光秀の間に恋愛感情があったという新解釈」だそうで、恋愛感情があったという設定自体はいいと思う。幼馴染ですからね。ただ、「国盗り物語」でも、同様のことは仄めかされていたので「新しい!」っていうほどでもないんだけどな、と思った。
豊臣秀次の新解釈には期待しているけども。
そういえば、司馬遼太郎の小説でも、過去の大河ドラマでも、「秀次は関白になりました。失脚しました。」というのは憶えているんだけど、具体的な失策がなんだったかというのはあまり記憶にない。いつの間にか追い詰められて切腹、という印象がある。
秀次に具体的に罪があったかどうかはさておき、よしんば罪があったとしても、妻妾と赤子まで全員処刑っていうのは、当時としても異常なことなのですね。
叡山焼き打ち、一向一揆の門徒虐殺ももちろん残酷なんだけれど、そこには政治的判断もあった。でも秀次の妻妾の処刑には何ら必要性がなく、秀次にしても、出家させてどこかに幽閉でもすれば済んだこと。
プロデューサーのコメントによれば、豊臣秀次役の成宮寛貴は、演技力を買われての起用のようです。
登場するのはかなり先だけど。
ちなみに、去年の「新選組!」は好きでした。
めちゃめちゃやっているように見えて、実はポイントははずしていない。
突飛な設定のようでいて、地理的な条件を考えれば、近藤と土方と坂本竜馬と桂小五郎が一堂に会することもあり得なくはないし、個々の登場人物に対する愛情が感じられた。
(少なくとも、「平泉にいる義経」と「木曽義仲」が「越後」で偶然出会うよりはずっとリアリティがある)
前半の近藤勇は、周囲の個性的な登場人物を引き立てる受身の役割だったと思うし、香取慎吾はその役割をしっかりと果たしていたと思う。
後半に入ってから、二条城で水戸藩士を一喝するシーンなどは「近藤勇になって」いたし。
欲を言えば、他の仕事との掛け持ちをやめていたら、もっと早くにそれが出来ていたかもしれないという気もする。
ジャニーズであることって、ビッグチャンスは多いけど、「仕事を残す」うえでは足枷になってないですか。
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