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2006年1月 9日 (月)

いま、会いにゆきます(ドラマ)

ドラマ版「いま、会いにゆきます」を見ました。
思ったよりもずっと良かったです。
思ったより、というのは、放送期間中にTV情報誌のあらすじを読んだり、ちらっと見て「なんだかかったるそうだな」と思った回があったりしたのだけと、DVDではそういうことがなかったので。
気合を入れて見る気になっている時とそうでない時の違いというのもあるだろうけど。

このドラマに限らないけど、本放送時は途中でCMが入ったり次の話まで一週間空いたりするので、ゆったりとした展開のドラマって、もどかしく感じたり、一話ごとの波乱にイライラすることがある。
で、実はそれが、私自身がリアルタイムではあまりドラマを見ない理由だったりもするのだけど、DVDでまとめて見るとそういうのは気にならなくなって、本放送時にもどかしかった展開ゆえに深みを感じることもあったりする。

出演者はみんな良かったけど、特に主役の若い2人は良かったですね。贔屓目抜きで、といわせてもらおう。

巧役の成宮君は大きな感情の振幅を演じるのはもともと上手いけど、このドラマではもっと微妙な心のゆらぎ--たとえば巡回図書館のコースが変わった時の混乱や、寝室のハンガーの向きが違っていた時の小さな困惑、記憶を失っている澪への繊細な気の遣い方などが上手いなーと思った。
それと、子供を抱きかかえる時の仕草とか、「祐司」と呼びかける声と口調が「お父さん」になっているし。祐司のワガママに手を焼いている時の表情も。
リアルタイムでドラマをご覧になった人が「成宮君=たっくん」と思ってしまう気持ち、わかるようになりました(笑)。
毎度のことながら、役によってほんとに違う人に見える。茶髪にピアスの時と違って見えるのは当然として、時期に差がない「あいのうた」の柳沼とも別人に見える。

澪役のミムラは、独特の透明感があって、ちょっとした笑い方や目のやり方までが「澪」で、「年齢を超えた母性」のようなものを感じた。
父子2人の前に現れた時の他人行儀さ、ぎこちなさがしだいに解けていく様子、巧との距離が近づいて再び恋に落ちるまでの心の動きがとても自然。
それと脚本が言葉遣いを変えているせいもあるけれど、ドラマ版の澪には育ちの良さが感じられて、そこも好ましかったところです。
先日、WOWOWで映画版を放送していたのでそちらも見てみたのだけど、実は、映画版で一番違和感を感じたのが澪でした。私にとってはミムラが澪になっていたので。

演じた人たちの実年齢を考えると、映画版のほうが親子としては自然で、ドラマ版は無理があるのだけれど、私にはドラマ版の3人のほうがより親子らしく感じられた。
息が合っているというか、親子の距離が近く感じられるというのか。
それにはドラマ版のほうが祐司役の武井証君が成長して演技の呼吸を合わせられるようになっていた、というのもあるだろうけど。
で、祐司もドラマ版のちょっとやんちゃなところのある祐司が好きです。映画版はひたすら良い子でいじらしかったけど、個人的に子供らしい子供が好きなので。
ドラマの祐司は、ちょっと生意気なところもあるし、理屈っぽい奴だな~と思う部分もあったけど、現実の子供ってそんなもんだし。
公式HPやDVDの特典ディスクを見ると、撮影中はほんとうに3人が仲睦まじかったことがうかがえます。

ファンタジーとしては映画のほうがまとまっているし、しっとりとした質感のある映像は詩情があって良いと思う。でも、どっちが好きかといえばやっぱり私はドラマのほうが好き。
もともと泣ける映画やドラマを積極的に見るほうではないし、映画を観にいくかどうかも出演俳優で決めることが多いので、成宮君が出ていなかったらドラマ版も見ることはなかったかもしれない。
先に見たためにドラマのほうが良く思えるという面もあると思う。
でも、蛇足に思えたドラマのエピソードのいくつかが物語の中で意外と大きな役割を果たしていることを、映画を見て再認識した。

ドラマ版の巧の仕事のミスとかリストラの話は、ファンタジーとしては現実的過ぎて興をそぎかねないんたけど、その部分があったことによって、巧の状況--日ごろは普通の人と変わらないのが負荷がかかると体調を崩すこと、それによって社会的にリスクを負っていること--がよくわかるようになっていた。
感情の表現という点では映画版の中村獅童の演技は繊細で素晴らしかったと思うし、巧の抱える脆さを表現していたと思うのだけど、不安定でありすぎて演技の比重がやや脆さのほうに傾きすぎという気もしました。
高校(ドラマでは中学)時代からの思い出の積み重ねを記憶している状況ならともかく、記憶をなくしている20歳(ドラマでは19歳)の澪が再び恋をする相手にしては、巧は不安定すぎるのではないかと。
映画の時間的制約もあっただろうけど、役の設定が「フォレスト・ガンプ」みたいに見えなくもなく、パニック障害とはちょっと違うような気もしたのです。
ドラマ版では、巧を取り巻く環境を詳細に描く時間的余裕があったために、巧の脆い部分を強調しすぎることなく、「日常では普通の人」として描くことができたと思う。
そして、それによって、澪が「二度目の恋に落ちる」という物語の核となる部分を自然に受け入れることができた。
まあ、そうでなくても年頃の女の子のすぐ近くに成宮君のたっくんがいたら、かなりの確率で恋に落ちるでしょうが。

もう一つ、ドラマには原作にはない澪の両親が登場すること。
澪の母親と巧の関係は現実味がありすぎていささか重く感じられ、果たしてファンタジーにこの現実感が必要だったかどうかはちょっと疑問を感じるところでもあった。
ただ「奇蹟の6週間」の間、澪は秋穂家の家事をテキパキとこなすけれど、実際の澪は19歳の大学生なわけで、現代の感覚からすると19歳にしてはちょっと主婦業が板につきすぎにも思える。
でも両親と実家が出てくることによって、あの家庭で育てられたのなら、澪が家事全般をしっかり仕込まれていても不思議はないと思えたし、そういう意味では両親を登場させたのは良かった。
澪の母親は家庭科の先生だけど、それは実のところ家事が出来る理由としてピンと来なかったりする。巡り合わせが悪かったのか家事の出来なそうな家庭科教師ばかりを見てしまったので。
ドラマで描かれた両親の人となりのほうが説得力があったかな。

巧の職場が図書館というのも好きな設定です。
「文庫になるまで待って書店で購入する」派なので、最近は利用することがないのだけれど、図書館には思い入れがあるし、懐かしさを感じる場所です。
巧は車の助手席に乗れないから移動図書館を自転車で追いかける、というのは巧の説明として秀逸な設定だったと思う。

釈然としないことが一つだけある。
子犬はどうなったんでしょうか。

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コメント

あけましておめでとうございます。
そして、お久しぶりです。毎日よらせてはいただいていました。
いつ読んでも、勉強になりますね。
「いま、会い」ご覧になったのですね。
実はこれ(感想)を待ってました!(笑)
よかったと思われて、うれしかったです。
実際、ドラマ放映中は、いろいろ言われたので。。心配で。。(特にナリは)
彼にとって初のピュアな役。贔屓目なし(あるかな)ですてきに演じていたと思っています。
これからも、私とは違った視線から見たナリの感想を聞かせてくださいね。楽しみにしています。

投稿: ひろろん | 2006年1月 9日 (月) 22時32分

 こんにちは、力作の感想、読ませてもらいました。「家事のできなさそうな家庭科教師」というところで、思い当たる節もあるのでくすっと笑ってしまいました。
 私は、このドラマで、成宮君(ひろろんさんのコメントでファンには”ナリ”と呼ばれてるようですね・・)もよかったですが、ミムラさんのファンにもなりました。彼女の家事をする演技が自然そうに見えたのは、本人が私生活でもそういうことをきちっとしているから、というのを何かで読んだ気がします。因みに絵本を読むのも趣味だそうです。そんな本人の資質から、あの透明感あふれる澪の雰囲気が生まれていたのだと思います。今の若い女優さんで、あの雰囲気を出せるひとは他にはちょっと思い浮かびません。映画は観ていないのですが、イメージだけで想像すると、竹内結子さんでは、雰囲気的にしっかりしすぎていて、あんなリスクのある選択をしそうにない気がしてしまうのですが・・。

投稿: azami | 2006年1月10日 (火) 17時00分

コメントありがとうございます。

>ひろろんさん
原作と映画に深い思い入れを持っている人も多いみたいですね。
批判があったことは知っていたので、見る前は、ドラマとしての出来が良くないのかな?と思っていました。放送時にちらっと見た印象では、成宮君も含めて配役に違和感はなかったので、ドラマの作りのほうに何か問題があるのかと思ったんです。
でも全然そんなことなかったですね。どのシーンも丁寧に作られていて。

>azamiさん
まとめようと思いつつ、長文になってしまいました。実はまだ書き足りないかも・・・(汗)。
ミムラが普段から家事をきちっとしているとのこと、なるほどと思いました。あれが全部演技なら、逆にすごいですが。
ドラマの澪には「内省的で芯が強い」という印象を受けたのですが、映画版の澪は、ドラマよりも率直というか積極的な女の子に見えました。竹内"澪"のタイプの女の子が現実にいたら、ひまわり畑までの紆余曲折はなく、卒業前に(シャープペンシルのエピソードより前に)さっさと巧に告白するんじゃないかという気がしました。

投稿: きつね | 2006年1月11日 (水) 15時12分

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