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2006年2月26日 (日)

女子フィギュア雑感(追記あり)

トリノ五輪・女子フィギュアスケートの雑感です。

荒川静香は、落ち着いて自分の力を出しきっての金メダルで、コーチを替えたこと、曲の変更は大きな賭けだっただろうけれど、決断が吉と出て良かった。
小手先でメダルを狙いにいったのではなく、荒川らしいプログラムで金メダルを獲得できたことがなによりでした。
アルベールビルで、伊藤みどりが圧倒的な高さとスピードのあるトリプル・アクセルで勝ち取った銀メダルにも感動したけど(いまだに、ラフマニノフの第二番の第三楽章を聴くと、伊藤みどりが三回転半を成功させた瞬間を思い出すくらい)、日本人選手が完成度と優雅さでメダルを獲得するようになったことには、また違った感慨があります。
ましてや「金」だし。
これからは、ネッスン・ドルマを聴くと、荒川静香のイナバウアーが思い浮かぶんだろうな。

スケーティング、選曲は素晴らしかったと思うのだけど、個人的な好みをいうとフリープログラムのコスチュームはあまり好きじゃないです。
荒川は肩と腕のラインが美しいのにそれが生かされていなくて、全体的にいかつく見えてしまった。トゥーランドットのイメージを出そうとしたのはわかるのですが。
蝶々夫人の時も着物をイメージしたデザインを取り入れていたけど、"くの一"か"あずみ"みたいだったし、東洋風なモチーフ自体は決して嫌いではないのだけれど、形やシルエットは奇を衒わないほうが良いと思う。
中途半端なオリエンタリズムよりは、選手の美しさを生かした衣装を希望。
で、安藤美姫のコスチュームはさすがワダエミだと思った。フィギュアスケートの衣装ということを尊重したのか、形はオーソドックスだけど、微妙な薄緑の色合いとわずかに見えた赤い色が「蝶々夫人」のイメージに合っていました。(追記:安藤が着こなせていたか、安藤を生かせたか、というと、そこには疑問符が付くけれど、あくまで「蝶々夫人」のフィギュアの衣装的解釈という点での評価です。)

エキシビションの荒川静香の衣装はきれいでしたね。こっちのほうが好きだなー。
まあ、あれを本番で着るわけにはいかないのだろうけども。

荒川静香とスルツカヤに注目していて、銀メダルのサーシャ・コーエン(クリスティーナ・リッチ似?)はあまり視野に入っていなかったのだけど、「ロミオとジュリエット」のオリジナルサウンドトラックからの選曲は一気に好感度が上がってしまいました。

それも「キャピュレット家の墓所」のところからなんて、選んだメロディも渋い。
ただ、盛り上がりのところがいわゆるスクリーン・ミュージックアレンジになっていたのが残念だった。
派手に転ぶと動揺して後の演技にも響いてしまうものだけど、あのジャンプの失敗から演技を立て直したのはl立派です。

安藤美姫は、華も潜在能力もあるのだから先のことは本人次第だと思う。
でも、「この本人次第」というのが問題で。
苦難ならば乗り越えられるかもしれないと思うのですよ。
常人には出来ない厳しい練習ならばこなせるだろうと思う。だって、そうやってここまで来たわけだから。
だけど、18歳の高校生の女の子が「スポイルされること」から身を守るのはとても難しい。
周囲の大人がしっかり守ってあげられれば良いけれど、自分でなければできないこともあるし。
顔や背中の吹き出物をみると食生活がきちんとしているようには思えないのだけど、食事制限などの自己管理をして、また、それを続けていけるのかどうか。
明るいキャラクターなだけに、よけいに大丈夫かなーと思ってしまう。
今回のトリノでも、ウェイト・コントロールさえしていれば4回転を跳べたと思うだけに惜しまれます。

年末のバラエティー番組で、松岡修造が「シャラポワが試合前にソースをかけないパスタを黙々と食べていた」という話をしていた。
・パスタを食べるのは炭水化物で試合に必要なエネルギーを摂取するため
・ソースをかけないのは、ソースをかけるとカロリーが高くなりすぎて胃に負担になるから
ということだけど、派手な活動をしていてもシャラポワはやっぱりプロなんだと思ったものでした。
安藤はアマチュアなんですけどね。

* * * * *

感化されやすいほうなので、通勤途中にiPodminiで女子フィギュアで使われた曲のプレイリストを作ってしまいました。
・蝶々夫人
・ラフマニノフピアノ協奏曲第二番
・トゥーランドット~誰も寝てはならぬ
・トゥーランドット~誰も寝てはならぬ ヴァイオリン版
・ロミオとジュリエット

このところ、映画、オペラ、バレエ、ミュージカルからの選曲が増えてきているのがうれしい。
音楽自体にドラマ性があるから表現しやすいんじゃないだろうか。
見ているほうも楽しめるし。

-----+-----+-----+-----+-----
オリエンタリズムについての追記:
オペラ「トゥーランドット」と「マダム・バタフライ」は、それぞれ古代中国と日本を舞台にしているけれど、あくまでも「イタリアオペラ」なので、欧米の人がスタッフなりキャストである分には、舞台上でトゥーランドット姫が満州族の衣装を着ていようが、蝶々さんが花魁みたいになっていようが、一向にかまわない。そのズレを楽しむのも一興だから。
ただ、日本人がそれをやるとなると抵抗を感じてしまう。
武家(士族)の出で家が没落して芸者になった蝶々さんが花魁の格好をしないことを日本人は知っているし(よほどの例外を除いて)、古代中国では映画「ラストエンペラー」のような衣装を着ていなかったことも知っているから。
トリノ五輪の荒川静香のフリーの衣装は、スタンドカラーも鮮やかなブルーのコントラストも、欧米人の目から見た、イタリアオペラらしいトゥーランドットのイメージ(フランコ・ゼッフィレリ演出の「トゥーランドット」の衣装も鮮やかなブルーだった)という点ではアピールになったとは思う。
思うけれども、もっと日本人らしい、違うアプローチで古代中国の姫君を見せて欲しかった、という気持ちも捨てがたいのです。
一方、ワダエミの衣装はインパクトには欠けたかもしれないし、先にも書いたとおり選手を生かすところまではいかなかったかもしれない。
でも、白と淡緑色と赤という、繊細な色合いと組み合わせ方で「蝶々夫人」の表現を試みたことは、衣装単体としては評価したいと思う。
衣装を生かすも殺すも、最後は選手の演技次第だし。


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コメント

私の意見ですけど、フリーのあのブルーのコスチュームはなかなかよかったと思いました。全日本の時やタチアナコーチの時着ていた黒やモノクロの妖艶な感じよりも、彼女の柔らかな滑りにあっていたような気がしました。手の動きもきれいに見えたし。たぶんモロゾフコーチの選択だと思うのですが、フィギュアの世界はコンサバティヴな世界なので、ワダエミ作の斬新な安藤さんの衣装よりも、審査員の受けはいいのではないかなと思ったりします。安藤美姫の衣装は素材のせいかかなりふっくら見えてましたね。私が一番すきだったのは、練習用のレオタードとタイツにノーメークのような彼女でしたが。練習する姿の美しさが自信にあふれていたので、彼女の金は当然の結果だったかなと思います。

投稿: azami | 2006年2月26日 (日) 23時59分

コメントありがとうございます。
もともとデコルテと腕のラインがきれいな人には、そこをアピールして欲しいという気持ちが強いため、荒川のフリーの衣装は、練習時やエキシビションにくらべると、腕の繊細な表現が隠れてしまったように感じられてしまいました。
最終的には「好みの話」ということに落ち着くのですけど。
記事のほうが言葉足らずでしたので追記しました。

投稿: きつね | 2006年2月27日 (月) 13時39分

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