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2006年8月 4日 (金)

ゲド戦記(映画)

「ゲド戦記」を見てきました。

原作は未読、製作サイドの話も耳に入れず、酷評されていること以外は白紙の状態で観ました。
酷評の中には、お気に入りの「ハウルの動く城」を駄作扱いしているものがあったりと、あまりアテにはならないと思っていて、「微妙だけど酷評されるほど悪くないな」というのが見ての感想。
不満や注文はいろいろあるけれど、良かったところもあったし、「映画に何を求めるか」によって評価は大きく分かれるだろうと思う。

大雑把な印象としては、「ファイナル・ファンタジー9」を見ているみたいだった。
あの世界観は好きだったので、これは誉め言葉です。

街や建物の造型は良かったです。これは非常に良かった、といってもいいかもしれない。
監督はもともと建築デザイン畑の人で、ジブリ美術館を手がけたということだけど、そういうセンスや素養があったからだろうか。
それと、個々の登場人物についてもっと知りたくなったので、原作を読んでみようと思った。
もともと映画と原作は別物だと思っているし、映画を見たところで自分の中で物語が完結してしまうことも多いので、映画が良かったからといって原作を読むとは限らないのですが。
映画として物語世界を完全な形で描ければ、それが一番望ましい形だけど、不完全なところがあっても、原作へ誘う入り口となるのなら、それも映画としての一つのあり方じゃないかと思う。
声優陣もテルーの長台詞が微妙だった以外は良かった。

「風と共に去りぬ」(比較して語るには評価が高すぎる作品だけど)も実は原作と比べると心理描写が簡略化されていて不満を感じることがあるのだけれど、この映画が作られたことによって「緑の小枝模様のドレスを着たヴィヴィアン・リー」がイメージとして定着したことは大きかった。
原作を読む時も無意識にヴィヴィアン・リーを思い浮かべてしまう。
ヴィヴィアン・リーの容姿があまりにもスカーレット・オハラそのままだっただけでなく、演技力も抜きん出ていたため、リメイク不可ですが。

不満な点としては、処々にジブリらしからぬ技術の拙さが見えたこと。
背景は絵画的なのに人の描き方が単純で、動きとか衣服の影等は「ナウシカ」以前に戻ったようだった。
羊の描き方もいまいちだったし、「生き物」の描き方は総じて不満。
それからアレンの二重人格?の表現はもっと違う描き方があったんじゃないかと思う。
アレンの顔が時々大友克洋の絵みたいになっていたけど、極端に顔を豹変させなくてもアレンの持つ強さと弱々しさは表現できたと思うのです。たとえば「千と千尋」のハクのような描き方。
で、人の動き等の拙さについては、ジブリに対する期待からすれば酷評する人がいてもしかたがないとも思うけれど、ただ、ジブリでも宮崎駿・近藤喜文とそれ以外の監督の作品ではもとから差がある。(といっても他が低いというよりは宮崎駿が突出してすごいのですが。)
宮崎駿作品に見られるキャラクターの素晴らしい動きは、あくまでも宮崎駿個人のこだわりであって、個々のスタッフには浸透していなかったのかもしれない。
「宮崎」とつくと、つい求めるものが大きくなってしまうけど、「ゲド戦記」も「宮崎吾朗」ではなく「○○吾朗」作品としてみれば、また違った見方になるんじゃないかとも思う。
物語の解釈や個性は同じでなくてもいいけど、「こだわり」は宮崎駿を受け継いで、あの域に達してほしいですが。

--*--*--
原作を読むときは、映画の街並みと「豹変前のアレンの顔」+声をイメージしながら読もうと思います。

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映画(邦画)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、TBありがとうございました。こちらからもふたつほどTBさせて頂きました。原作を読まれるそうなのでお邪魔かもと思いましたが。
映画「ゲド戦記」についての、

>街や建物の造形はよかったです。

には全面的に同意です。
竜の描かれていた壁画なども重厚でなかなかよかったと思いました。
原作の感想なども、読まれたら、また教えてください。

投稿: azami | 2006年8月 5日 (土) 19時12分

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» 映画「ゲド戦記」 [あざみ野荘つれづれ日記]
 ジブリ映画の「ゲド戦記」を子どもたちと一緒に観てきました。  自分の感想を書く [続きを読む]

受信: 2006年8月 5日 (土) 18時54分

» 「ゲド戦記」追記 [あざみ野荘つれづれgooブログ]
 映画「ゲド戦記」と、その現時点での評価について、少しだけ。  批判票のほうが圧倒的に多い(主にジブリファンと原作ファンだと思う)感じなのですが、私は原作ファンに入ると思うので、原作ファンたちの批判と意見については、尤もだと思うし共感もできます。でも、ジブリアニメファンたちの、ジブリと宮崎駿アニメを愛する彼らの批判については正直よくわからない。私は、アニメファンでもジブリファンでもないので、ナウシ�... [続きを読む]

受信: 2006年8月 5日 (土) 19時02分

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