シュナの旅
宮崎駿の「シュナの旅」を読みました。
この本は、ずいぶん前に書店の店頭で見て、気になって手には取りつつも「まあ、いいか」と買うには至らなかったのだけど、もっと早く読んでもよかったなとちょっと後悔しています。
まあ、こういう寓話的な話は、無性に読みたくなる時とそうでない時があったりするのだけど。
物語の元になっているのはチベットの民話。
でも、ヤックルや登場人物の服装など「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」を彷彿とさせるところも随所にあったりと、ストーリーや世界観には宮崎駿のエッセンスが詰まっています。
コマ割りで描かれている点では漫画なのだけど、やはり「絵物語」と呼ぶのが一番似つかわしいかも。
谷間の小国の描写から始まって、登場人物の表情の繊細な表現、街や自然の造形etc.今更なんだけれど、宮崎駿の画力と色彩感覚の素晴らしさを感じました。(ほんとに今更だなぁ)
詳しいあらすじなどはこちら。
「シュナの旅」は映画「ゲド戦記」に原案とクレジットされていて、なるほどテルーの顔はテアそのものだし、ホート・タウンの街並み、人狩りの馬車、馬車で連れて行かれる人々、浜辺の情景などなど、「ゲド戦記」は「シュナの旅」のイメージを借りている、というか、多くの場面で絵と設定をそのまま使っているのだけれど、内容はまったくの別物。
「もののけ姫」、「ナウシカ」とは共通点を感じるけれど、「ゲド戦記」には感じないのが不思議なところ。ほんとに同じ絵なのに。
「シュナの旅」が出版されたのは1983年で「風の谷のナウシカ」公開の前年。
アニメ化したかったけれど、地味な話なので断念、でも、なんとか映像化したくて漫画という形で出版した、ということで、思えばジブリのアニメが実写の映画を凌ぐ大ヒットを連発をするようになったのは「もののけ姫」以降のことなんだなー、ということを今更のように思ったりした。
「風の谷のナウシカ」は評価は高かったものの商業的にはヒットしたわけではないし、「となりのトトロ」も「アニメーションとしては」という注釈付きのヒットだし。
今はすっかりブランドになっているけれど、そこまで持っていくのはたいへんだったと思う。
「シュナの旅」は、物語・絵の完成度が高いだけでなく、絵の一つ一つが「こういうふうに描きたい」「こういうふうに表現したい」という創り手の意思に満ち溢れている。
どこにも発表する場がなくても、たとえ誰かに止められたとしても、宮崎駿は「シュナの旅」を何かの形で創造し、世に出そうとしただろうと思う。
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昨夜(9/7)の「ワールドビジネスサテライト」で、宮崎駿、ジョージ・ルーカス御用達(?)のプラモデル製造会社を紹介していた。
「紅の豚」の飛行艇、スターウォーズのミレニアム・ファルコンのプラモデル化を唯一許可されている会社、ということで、私自身はプラモデルには一切興味はないけれど、本物を創ろうとするこだわり、心意気は好きです。
とある会社の航空機製造セクションの部員はみんな「紅の豚」が好き、という話を小耳に挟んだことがあるのだけど、なるほどと思ったものだった。
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