お気に召すまま
ようやく観てきました、「お気に召すまま」。
シアター・コクーンに入る前に、せっかくなのでザ・ミュージアムでプラハ国立美術館展を見る。
で、静物画と「道化師と猫」の猫のぶさかわいさにひかれて図録を購入。
カメラを持ち歩くことが多くなったせいか、最近は静物画に目が行くようになりました。
そして本題。
心待ちにしていたのがこんなに遅くなったのはJリーグの日程との調整によるのだけど、アジアカップのことをすっかり忘れていた。。。
観劇中にオーストラリア戦の経過が気になるとイヤだなと思ったけど、見ている間はすっかり忘れていたくらい面白かったし、集中できた。
さて、舞台が始まって、まず目に付いたのが「馬の足」。
これが上手い。
馬の足の動きにリアリティがあるんですよ。
(一年の三分の一は週末に馬を見ているので、馬らしさにはちょっとうるさい。)
それからセットがとても美しくて、森に入る前の場面では、窓と照明の使い方が効果的。
窓一つで屋外になったり令嬢たちの部屋になったり、というのが面白かった。
アーデンの森の美しさはいうまでもなく。
小栗旬のオーランドはとにかく立ち姿と身のこなしが美しくて「『颯爽』とはこの人のためにある言葉、という感じ。
従者のアダムを労わるところとか、アーデンの森で公爵と対峙する場面は誠実さもしっかり伝わってきた。
この場面のオーランドと公爵の心の通い合い、良かったです。
それから、近くの通路を通った時に見えたオーランドの肩甲骨が美しかった。
そして、ロザリンドの成宮君。
女と男の演技の切り替えが絶妙で、「間」の良さとコメディのセンスを感じました。
このあたり、ドラマや映画ではわかっていたことだけど、舞台で見るのは初めてなので。
去年の「魔界転生」はコメディや「間」のお芝居じゃなかったし。
男のいでたちでありながら、ただ立って歩いている時が女の子だと思わせる動きで、男の声やしゃべり方をする時も、ちゃんと「男を演じている女の子」として話していると感じる演技。
成宮君の化粧をした顔は田中美里みたいに見えた。
(田中美里もキリッとした男顔の美人だし。)
女声の台詞が続くから、声はちょっときついかなーと思ったけど、男の声の時は以前の舞台(DVDで見ただけですが)よりも良く響いているように感じた。
今だったら、フォーティンブラスの台詞ももっとずっと良く通って迫力があるんじゃないか。
男の声(つまり、本来の声)のお芝居も見てみたい。
それからシーリア。
こちらはずっと女の姿のままだから、女らしさを強調する必要がない分、仕草や佇まいがナチュラルに女らしい。
声もそんなに高くしていなくて、それがシーリアの落ち着きに感じられてリアリティあり。
演技のアクセントの付け方がロザリンドと良いコントラストを出していたと思う。
ロザリンドとシーリアの掛け合いがコミカルですごく良かった。
アーデンの森にやってきて、疲れて動けない場面、シーリア(エイリーナ)が目を開けたまま倒れこんで"梃子でも動かなくてよ"という感じで、そのふてぶてしさがイイ。
女の強さっていうんだろうか。
見た目は儚げなのに、芯は強い女の子。
まあ、ロザリンドと一緒に宮廷を抜け出すあたりから、肝の据わった人物ではあるんだけど、そのことを舞台であらためて認識した。
これまではわりと漠然としたイメージしかなかったのだけど、ロザリンドは華やかで感情豊か、シーリアは楚楚としているけど芯は強い、というのがこの舞台からの2人のイメージ。
ジェイクイス(高橋洋)の筋金入りのへそまがりぶりも良かったです。
無差別シニカルではなく、こういう一本筋が通った男だから、公爵にも愛されるのだろう、と。
ここで、可愛かったもの二連発
- 噂の坂本メイさん。どうしてあんなにおとなしいの?
- 小姓役の子たち、可愛かっただけでなく歌も上手だった。
ハーモニーがとてもきれいで。ここで拍手が起こったのも当然。
歴史劇以外のシェイクスピアの戯曲は、ラム姉弟の「シェイクスピア物語」で読んでいて、「お気に召すまま」もお話としては知っていた。
ただ、本筋と関係の無い台詞は省略されてしまっている。
舞台を見て、物語で割愛されていた台詞のいくつかが心に響いて、戯曲を読んでみようと思っているところ。
中でも、一番心に残ったのが羊飼いのコリンの台詞。
俺は正真正銘の働き者だ。
食うもんは自分で稼ぐ、着るもんは自分で手に入れる、人の恨みは買わねえ、誰の幸せだってうらやましいとは思わねえ、他人の喜びは俺の喜びだ、自分の不幸は甘んじて受け入れる、俺の一番の自慢は雌牛が草を食い子羊も乳を吸うのを見ることだ
なかなか、こんなふうには生きられないけど、少しでもそうありたいもんだ。
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休憩時間に白ワインを飲んだのだけど、お金を払って受け取ると同時に予鈴?が鳴ったため、一気飲みしてしまった。
ワイン一気飲みは初めてです。
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