中世の貴婦人
「THE ICE」の放送で、アナウンサーが浅田真央の「カプリース」を「中世の貴婦人が、社交界で扇を手に踊っている様をイメージしています」と言っていた。
「昔の貴婦人」くらいの意味合いで使用したのだろう、ということはわかるのだけど、歴史好きとしては非常に引っかかる表現。
これに限らず、過去の時代を「中世」で括っていることが意外と多く、マリー・アントワネットを「中世ヨーロッパ」に括ったり、もっと極端な例では「クイーン・ヴィクトリア~至上の恋」を見て「中世って素敵ね」と言うのを耳にしたこともある。
1901年に亡くなったヴィクトリア女王は、日本で言えば明治時代の人なのに。
で、こういう粗雑な括り方がとてもイヤ。
衣装やヘアスタイル一つとっても、中世・近世・近代と変遷していて、それをおしなべて「中世」と呼ぶのは大雑把すぎるというもの。
日本だって飛鳥・奈良・平安・鎌倉・室町・・・と時代によって違うのだし。
「カプリース」の演技だけをみるとコミカルなプログラムという印象なんだけど、ほんとに「中世の貴婦人が社交界で扇を持って踊る」イメージでプログラムを作ったんでしょーか。
中世の範囲がテキトーなのは日本だけではないのか。
ほんとはもっと別の時代をイメージしているのでは?
中世にはそもそも社交界という概念はなかったし(あるとしたら宮廷)、パガニーニは古典派の時代の人なんだけど。
「中世」という言葉から思い浮かぶのは宗教画、クリュニー美術館とそのタペストリー、プロヴァンの街並みなど。
この時代のダンスは、1968年度版「ロミオとジュリエット」の「ムレスカ」みたいな感じだったのだろうと思う。
それを、「扇を持って元気よくダンス」を中世と言われると、イメージの違いに戸惑ってしまいますことよ。
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