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2009年9月

2009年9月30日 (水)

ハムレット(メル・ギブソン版)

待ちに待ったメル・ギブソン版ハムレットのDVDが発売された。
私にとっては、メルギブソン版というよりもゼッフィレリ版、なのですが。

「ハムレット」という戯曲の奥深さの表現においてはブラナー版に一歩譲るものの、ゼッフィレリ監督作らしく、中世の衣装とセットが素晴らしい。
特にグレン・クローズ演じるガートルード王妃の衣装はデザイン、色合い、質感すべてが素敵。
※ヨーロッパの歴史モノをなんでも中世に括ってしまうアバウトさを嘆いたことがあるけれど、この映画の時代設定は正真正銘の中世。

この映画で印象的だったのがエルシノア城の城壁から見える海の色だったのだけど、ビデオが劣化してからはぼやけた映像しか見られず悲しかった。
DVDの鮮明な映像で再び見ることができて幸せ。

そして、忘れちゃいけないのがヘレナ・ボナム・カーターのオフィーリア。
可憐で哀切で、狂気の演技は静かなのに怖い。
ガートルードが怯える気持ちがわかるし、グレン・クローズを怯えさせているわけだからすごいです。

劣化した映像では、紅顔の美青年に見えたナサニエル・パーカー演じるレアティーズが、美青年ぶりはそのままに、場面によっては蒼ざめていたり、複雑で陰影のある表情を見せていたこともわかりました。
レアティーズが美青年過ぎて、「ハムレット、ひっどぉぉい」と感じてしまうのは変らないけど。


配役については、ハムレットと墓堀人夫はブラナー版が良く、先王、オフィーリア、レアティーズはゼッフィレリ版、クローディアス、ガートルード、ポローニアス、ホレーシオは甲乙つけがたし。
ただ、クローディアスが毒杯を飲もうとする王妃に「ガートルード!」と声をかける場面の一瞬の間は、ほんとにコンマ数秒の違いなんだけど、ブラナー版が良かった。

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2009年9月25日 (金)

移動祝祭日

ヘミングウェイの「移動祝祭日」の文庫を見つけたので思わず購入。

もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、
その後の人生をどこで過ごそうとも、パリはついてくる。
パリは移動祝祭日だからだ

If you are lucky enough to have lived in Paris as a young man,
then wherever you go for the rest of your life it stays with you,
for Paris is a moveable feast.


これは扉に記された言葉。
ヘミングウェイは「誰がために鐘は鳴る」と「武器よさらば」しか読んでいないけれど、この言葉は誰かのエッセイで引用されていたのを読んで以来、ずっと心に残っていた。
誰の本だったかが定かでないけど。

パリに行ったことも行く予定もなかった時は、この言葉の「パリ」をもっと漠然としたイメージに置き換え、パリのような--移動祝祭日のような場所や時間は誰にでも訪れうるもの、というふうに解釈していた。
もちろん、パリを他の場所に置き換えて読んでも、この文章の美しさや意味するところは変らないと思う。
でも、ひとたびパリを訪れると、この文章はほかでもない、パリそのものの魅力を簡潔かつ的確に言い表した言葉として心に響いてくる。
私がパリに行ったのは「若者の頃」ではないし、ほんの数日滞在しただけで、暮らしたわけでもないんだけれど、「その後の人生をどこで過ごそうとも、パリはついてくる」というくだりが胸にストンと入ってくるのです。
「うん、ついてきているな」と。

扉の言葉だけで、この本のモトはとったようなものだけど、内容もなかなか味わい深かった。
ヘミングウェイが描く1920年代のパリは素敵だし、ワインや料理が美味しそう。
何度かワインの1リットル壜が出てきて、当時のパリではそれが普通だったのだろうか、なんて思ったり。
文中に登場するヘミングウェイの友人たちについては、ほとんどが「ふーん、そんな人がいたのか」という程度の関心しかないけれど、スコット・フィッツジェラルドのくだりは面白かった。
フィッツジェラルド夫妻の破綻した生活については村上春樹の「スコット・フィッツジェラルド・ブック」で読んでいたけれど、ヘミングウェイは実際に迷惑をかけられた当人なわけで、とてもリアル。
多大な迷惑を蒙りながら、「グレート・ギャッツビー」を読んでフィッツジェラルドに敬意を表するヘミングウェイがとても好きになった。
小説家というのは才能に恵まれているだけでなく「書かずにはいられない人たち」なのだ、ということも、この本を読んで感じたこと。
当たり前といえば当たり前なんだけど。

以前「ヘミングウェイが愛した6本指の猫たち」という写真集を買ったのだけど、猫好きでパリ好きというのは親近感を感じてしまう。

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2009年9月23日 (水)

ココ・アヴァン・シャネル

オドレイ・トトゥ主演のフランス映画「ココ・アヴァン・シャネル」を観てきました。
ブランドを立ち上げる前の、若き日のシャネルを描いた映画。
一ヶ月前に、やはり若き日を描いたアメリカ版を見たばかりなので、どうしても比較してしまうけど、男装、コルセットなしの服、麦藁帽子、マリンルック、ジャージー素材など、シャネルの重要なモチーフを、「ココ・シャネル」はデザイナーとしての成功に結びつけて描いたのに対し、「ココ・アヴァン・シャネル」は無名時代のシャネルの個人的なこだわりとして描いている。
アメリカ版は「シャネルはこんな風に成功しました」という話で、フランス版は「あるところに一人の女の子がいて、後にシャネルになりました」という話。
サクセス・ストーリーを期待すると物足りなさを感じるかもしれないけれど、ココ・シャネルという一人の女性の物語としては、「ココ・アヴァン・シャネル」のほうが私は好き。
なんていうか、映画らしい、というのか。

シャネルと最初の愛人バルサンとの関係が生々しく、シャネルの図々しさや嘘つきな面、ウソを暴かれて間の悪い思いをする場面なども容赦なく描いていて、コネもお金も持たない女性がのし上がるための苦労のほどがしのばれた。
周囲の男性からの援助はあったけど、それは必ずしもタナボタではなかったのだな、と。
そういう若き日のシャネルの焦燥感や厚かましさを、オドレイ・トトゥがイヤらしくなり過ぎず、「いい子ちゃん」にもせずに演じています。
そして、この映画で意外と良かったのがシャネルの最初の愛人バルサン。
容姿はさえないし粗野でがさつ、身分違いのシャネルの存在を友人たちから隠そうとしたり、無神経な言動をしたり、最初は「なんてイヤな奴なの」と思ったけど、シャネルが自分の服を勝手に着ても文句を言わず、居座るシャネルをなんだかんだと居させているし、傷つかないように心配したりと、複雑で奥行きのある人物になっていた。
生涯の恋人であるカペルとの恋愛はわりにあっさりとした描き方だったけど、ピアノや本の小道具の使い方が効果的で、二人が共通の価値観を持っていることがわかる。

カペルの死のくだりは、アメリカ版で強く不満に感じた点だったけど、こちらは余計な回想やフラグが入っていなかったので、悲劇性が強まったように思う。


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2009年9月17日 (木)

オマエ(マスゴミ)の話はつまらん~大滝秀治風に

漫画家の唐沢なをき氏がNHKに取材中止を要請した件について。

この漫画家氏の作品も「マンガノゲンバ」という番組も知らないけれど、常々「マスゴミ発案ストーリー」に沿って作られたと思しき番組が増えているなーと感じていたので、「ディレクターが頭の中で勝手にストーリーを作っていた」というのは「さもありなん」だし、不愉快に感じたというのもそうだろうなーと思った。
妙な作意を持って作られた番組は、とりたてて舞台裏などを知らずに見ても鼻についてしまうので、製作側の作意は一視聴者にとっても気になること。
どうやらマスメディアの内部の人たちには特有のストーリーのテンプレートみたいなものがあるようだけど、それが面白いならまだしも、視聴者からするとちっとも面白くないことが多いし。
ドキュメンタリーといえども行き当たりばったりでは作れないだろうし、ある程度の段取りを決めて取材や撮影に臨まなくてはならないことは理解できるとしても、何事も限度というものがある。
脳内ストーリーを押し付けたり、質問への答えを否定するなどは論外。
自分のことを質問されて、思ったままに答えたのに「いや、そうじゃなくて」と言われれば、そりゃカチンとくるだろう。
自分の発想の陳腐さを認識できていないことと、取材中止に至るくらいに相手を不愉快にさせてしまう無神経さとは表裏一体のような気がする。
くだんの漫画家氏も、ディレクターの考えたストーリーが面白かったり、納得がいくものなら、「ちょっとくらい乗ってもいいかな」と思ったんだろうし。

ドキュメンタリーを段取り優先で製作するのはNHKだけの問題ではないだろうけど、最近のNHKはドキュメンタリーのみならず、歴史情報番組や大河ドラマもスタッフの脳内ストーリー優先に見えるので、よけいに「さもありなん」なんだな。

先だっての眞鍋かをりの時にも思ったけど、こういうことへの異議や不快感を表明できる場としてブログは価値があると思う。

漫画家、唐沢なをきさんがNHK放送を中止要請 「取材が不愉快だったから」
からまんブログ

で、NHKをフォローするってわけでもないけど、先日見た「ザ・ソングライターズ」という番組での佐野元春のインタビュアーぶりが素晴らしく秀逸だった。
たくさんの質問を用意していて、話の流れを遮ることなく、ゲストの矢野顕子から次々と言葉を引き出していく。
話が少し思わぬ方向に逸れかけても、無理に引き戻そうとはせず、穏やかに自然に流れを戻す。
引き出したい言葉、想定する着地点のようなものは佐野元春の頭にもあったのだろうけど、決してそれを無理強いしたりせず、淡々と質問を投げかけることで話を進めていく。
ゲストの矢野顕子も、質問から触発される部分があったらしく、「よい質問ね、それ」と感心していた。
仕事現場の取材と公開のトークという違いはあるけれど、「インタビューかくあるべし」みたいな番組でした。

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2009年9月14日 (月)

カペー朝~フランス王朝史1

いろいろな国の通史を読むのが好きで、かなり手当たり次第に読んでいる。
でも、これまでは、なぜか一番関心の深いフランスの歴史を扱った日本語の本がなかった。
ブルボン朝はわりとまとまった記述を読むことができるけれど、ヴァロア朝は百年戦争とサン・バルテルミーの虐殺に集中しているし、カペー朝にいたっては数行。
まあ、「フランス中世史夜話」、「聖王ルイの世紀」など、まったくないわけではないけど、内容はともかく活字が非常に見づらく日本語がこなれていないのが難点。
#「メロヴィング王朝史話」を出している岩波文庫もそうだけど、活字の見づらい本は読む気力がそがれてしまうので改善してほしい。


英国史では森護の「英国王室史話」がとても読みやすくて好きなので、そういう感じの本でフランス版がないものかしらと思っていたら、やっと出ました。
講談社現代新書より、佐藤賢一著「カペー朝~フランス王朝史」。
ユーグ・カペーからシャルル4世までの歴代の王をわかりやすく解説していて、ヴァロア朝に続くようなので、そちらも楽しみ。


なお、中公新書の「物語○○の歴史」シリーズは、通史好きにはありがたい企画なのだけど、「これ物語じゃないよね」というのが混ざっているのが困る。
一応、中身を確認してから買うので「失敗した!」ということはないけれど、「物語~」と銘打ちながら物語になっていないのは看板に偽りあり、である。

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2009年9月 9日 (水)

南京路に花吹雪

「鋼の錬金術師」を読んでいたら、急に森川久美が読みたくなって、未読だった「南京路に花吹雪」と「ざくろの木の下で」をネットで注文。

「南京路に花吹雪」は、戦前の上海租界の情趣たっぷりだけど、日中事変直前の抗日運動が背景ということで銃撃・爆破等の物騒な場面も多く、後の「イスタンブル物語」も戦闘シーンが出てくるし、森川久美って、線の細い絵とはうらはらに人物描写が骨太だという印象は前から持っていたけれど、それだけでなく、意外とアクションシーンを描いていたのだな。

「鋼の錬金術師」と森川久美がどういうつながりかといえば、マスタング大佐のキャラクターに森川久美の歴史漫画の登場人物を彷彿とさせるものを感じるからです。
有能さと無能?さ、傲慢なようで優しい性格、リアリストかつ理想主義、軽さと重さ、権力の座にいることを厭わない、などは、他の漫画のキャラクターも持っている要素だけど、その混ざり具合に近いものを感じるな、と。
絵のイメージはまったく違うし、なによりも少年漫画と少女漫画という違いはあるんだけど。

「ざくろの木の下で」は、錬金術師と流れ者の傭兵が主人公の、幻想的でユーモラスな物語。
はまったのがヴァレンチーノ・シリーズからというのもあるけれど、森川久美の絵は東洋よりも西欧のほうが似合うし、好き。

森川久美を検索すると絶版が多いのが悲しい。
「イスタンブル物語」まで絶版で、漫画が一期一会のようになっている状況には危機感を感じてしまう。
「アニメの殿堂」はともかく、漫画・アニメを網羅した国立の資料館は確かに必要だと思う。

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2009年9月 8日 (火)

時そば

報道ステーションに民主党の議員が出演して温室効果ガス25%削減について前向きに語っていた。
落語の「時そば」を聞いているみたいな気分になった。

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2009年9月 5日 (土)

パーソナルトレーナー Wii

このたび、めでたく開始から500日を経過したWii Fitに加えて、「EA SPORTS アクティブ パーソナルトレーナー Wii 30日生活改善プログラム」の「30日チャレンジ」に挑戦。
なんとか30日を完走しました。
トレーナーが組んだメニューを消化する、というプログラムで、初日に「ノーマル」を選択したら、きつかったので2日目からは「イージー」で。
30日といっても毎日ではなく、2日運動して1日休みの繰り返しなので、正味は20日。
レジスタンスバンドを持ったり、ヌンチャクをレッグストラップにしまったり、ちょっと忙しいのが難だけど、適度に負荷かかるのが良い感じです。

トレーニングメニューのカスタマイズができるので、30日チャレンジ終了後は、自分で組んだメニューでエクササイズする予定。
トレーニング中はインストラクターが励ましてくれるのですが、「詩を読むように軽やかです!」など、そこはかとなく翻訳調なのがなかなか楽しい。

10月にWii Fit Plusも出るそうなので、そちらも楽しみ。

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2009年9月 4日 (金)

ニュースの取捨選択

起きぬけのボーっとした頭でNHKの朝のニュースを見ていたら、酒井法子の事件の取調べ状況を報じていたのだけど、その内容に「ん?」となった。
そもそも取り調べの内容を逐一報道することにも疑問を感じているけれど、「覚醒剤の吸引方法」を詳細に報じる必要があるんだろうか。
それも定時のニュースで。
それよりも、覚醒剤が人体に及ぼす影響をもっと報道すべきだと思うんだけど。
視聴者の自己責任といえばそれまでだけど、今の報道ぶりを見ていると、「そんなに夢中になるものなら・・・」と興味を持つ輩が出てきかねないと思う。

政治向きのニュースはフィルターかけまくるのに、こういうニュースはたれ流しって、なんか違うんじゃないの?と思います。


ちなみに私の場合、中島らもの「ガダラの豚」の覚醒剤中毒者の描写が知識のほぼ全て。
でも、これだけでも覚醒剤の深刻さと恐ろしさはよーくわかります。

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