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2009年10月15日 (木)

黄金の日日

CSで「黄金の日日」を放送中。

脚本・演出・役者の演技と三拍子揃ったハイレベルな大河だけど、一番のお目当ては高橋幸治演じる信長。
衣装を着て立っているだけで信長そのもの。
気品、威厳、優しさ、冷酷さ、野蛮さをすべて兼ね備えた完璧な織田信長。
なにしろ、威圧感十分な丹波哲郎が心服して当然、と思えてしまうのだから。

以前は主人公の助佐にさほどに魅力を感じなくて、主人公=物語の核と思って大河ドラマを視聴していた頃は、主人公を好きになれないと不満たらたらだった。
でも、今は歴史的背景を描くために主人公を狂言回しにする手法もあると知っているし、「黄金の日日」の真の主役は自由都市堺の盛衰と歴史との関わりである、という視点で見ると、ルソン助佐衛門は狂言回しの役割を担った主人公として非常に優れた設定だったと思う。
架空の人物で商人だからフットワークは軽いし、いろんなところに顔を出しても史実に影響しないし、主人公としては一貫して商人の視点を持ち続けているから、物語としてブレや破綻がない。

それから、主人公の敵役ということもあって、あまり好きじゃなかった今井兼久(宗薫)に対しても大きく見方が変ってきた。
兼久役の林隆三は「国盗り物語」の雑賀孫市、「翔ぶが如く」の勝海舟など、大河ドラマは軒並み好演が多いけど、「黄金の日日」の今井兼久も、偉大な父親に対する屈折した気持ちとか、時代の波にもまれて成長していく様子を豪快に、かつ、きめ細かに演じていたのね。

主人公を狂言回しに使った大河ドラマで成功したのが、この「黄金の日日」と「風林火山」、「新選組!」で、失敗したのが「利家とまつ」、「功名が辻」、「義経」。
そもそもは主人公があらゆる歴史場面に顔を出すこと自体に無理があって、だからこそ設定や職業に工夫を凝らさなくてはいけないのに、行動に制約があったはずの武将の妻にそれをさせたらリアリティがなくなるに決まっている。
※義経は史実でもフットワークの軽い人ですが、鞍馬の山中から毎晩のように京の町に出てくるとか、奥州時代に散策の途中に越後で「偶然」木曽義仲と出会うのは、いくらなんでもあり得ない、と思いました。


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信長役の高橋幸治と秀吉役の緒形拳は、役者のタイプとしては真逆に近いと思う。
「黄金の日日」では、実は共演場面はあまり多くないのだけれど、この二人の演技のハーモニーが素晴らしい。
高橋幸治は、信長以外の役でも比較的台詞の抑揚と表情の変化が少ない人だけど、それでいて厳として近藤勇だったり大谷刑部として存在してしまうあたりが演技の奥深さというんでしょうか。
抑揚の少ない台詞回しや無表情を「棒読み」と切って捨てる人がいるけど、そういう人は高橋幸治の織田信長を見ても、ただの棒読み演技にしか見えないんだろうな、と思うとなんだか悲しい。

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