主役≠一番目立つ人
「ゼロの焦点」の感想を見ていて、ちょっと気になったことなど。
・ヒロインなのに目立たない、喰われている
広末涼子が目立っていたかといわれれば目立ってはいなかったし、中谷美紀のほうが迫力があって強烈な印象だった。
なので「あー、中谷美紀が主役を喰ってたねー」くらいのノリであれば同意に吝かではないのだけど、嵩にかかって力説することでもあるまい、とも思う。
「ゼロの焦点」においては、禎子の存在なしには物語が始まらないという点で確として主人公といえる。
で、一番目立ったり、一番強かったり、一番出番が多いのが主人公とは限らないと思うんですよね。
主人公は物語の核ではあるけれど、一番目立つかどうかは別。
もちろん、「一番目立つことが多いポジション」ではあるのですが。
それと、昔は知らず、今の俳優は映画やドラマの中で一番目立とうとして演技をしているわけじゃないと思う。というか、そうであって欲しい。
どんな役も物語の一ピースであり、それが魅力的に機能するのが役者冥利というものじゃなかろうか。
なかには大嵐浩太郎(from 笑う犬の冒険)みたいな俳優もいるかもしれないけど、ギャグ以外では見たいと思わないな。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の主人公はジャック・スパロウではなくウィル・ターナーだし、「王の帰還」で活躍したのはサムでも主人公はフロド。
「主役=一番目立つ存在」という認識が高じると、近年の大河ドラマのように主人公がそこらじゅうにしゃしゃり出ることになるので、「感覚は人それぞれ」で片付けられない危機感を持ってしまう。
・衣装とメイク
スパッツ風のパンツ、女優陣の眉の描き方に対して疑問を呈しているブログを見かけたのだけど、当時を知っている世代ではなく、ずっと若い世代の人と思われる。
昭和32年は西暦にすると1957年で、オードリー・ヘップバーン主演の「麗しのサブリナ」公開後なので、1957年当時の流行の先端を行く女性がサブリナパンツを身につけているのは時代設定として合っている。
また、1950年代の女優の化粧は今と比較的似ていて、少なくとも1930~40年代の弧を描いた細眉、アイメイクが濃くなる1960~70年代に比べると、はるかに隔たりは少ない。
なので「今風のメイクだから変」という感想はちょっと的外れ。
時代考証には気を使っている映画だし、中途半端な知識や思い込みで疑問を持つよりは、素直に見たほうがいいと思う。
・鵜原憲一の肩の傷
映画冒頭のお見合いの場面で「機銃掃射で・・・」という話をしていたので、その時に負った傷と思われる。
「憲一が戦争の傷跡を心にも体にも残している」ことをビジュアルで表現したのだと解釈した。
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広末涼子にやたら辛口なレビューもちらほら見かけたけど、なかにはアンチ広末と思しき意見もあって、映画館に足を運ぶかどうかを出演者で決めることの多い私としては「嫌いな女優が出る映画を何故見に行くんだろう?」と素朴な疑問。
(テレビで見るのはまた別)
広末涼子については、そんなに(例えば綾瀬はるかほどには)好きなわけではないけれど、「秘密」で娘と「娘の体を借りた母親」の仕草の違いを演じ分けていたので、求められればそういう演技がしっかりできる女優さん、という認識です。
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