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2010年8月

2010年8月29日 (日)

最後の授業

海外旅行から帰ってきて「アルザス地方のストラスブールに行きました」と言って、「あ、アルザス。最後の授業ですね」という反応が返ってくると、ちょっとうれしい。
「それどこ?」という表情をされることのほうが多いけど。

「最後の授業」を読んだのは、子どもの頃、家に「月曜物語」があったから。
「月曜物語」のその他の話はまるで覚えていないのだけど、「最後の授業」だけは強く記憶に残っている。
教科書に載っていた時期もあったみたいだけど、「言語的多様性を否定する側面を持つ政治的作品」云々という批判を受けたりして載らなくなって久しいらしい。
確かにフランス寄りのスタンスで描かれているけれど、それと物語としての価値とは別なのに。
「最後の授業」には何か物語としての核みたいなものがあって、それが子どもだった私の心に響いたのだと思うし、読まれる機会が失われるのはもったいない。
現地の人たちは無関係ではいられないとしても、遠く離れた日本の子どもは、フランスとかドイツとか政治性などは意識しないで物語を味わっても良いんじゃないかと思う。
この物語を通して、フランスとドイツの国境にアルザスという地方があり、そこは2つの国の間でたびたび所属が変わっている、ということを知るのは無駄なことではないはず。
具体的に何かの役に立つということはないかもしれないけれど、少なくとも頭と心の糧にはなる。

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2010年8月27日 (金)

自分の頭で考える

ホメオパシー療法:「効果ない」 山口で乳児死亡、学術会議が談話


日本の学術団体が民間療法みたいなものについてここまで強く否定するのは珍しいけど、それほど危険な事例が増えていて、危機感を持ったということなんだろうか。

ホメオパシーというのは減感療法みたいなものだと思っていたのだけど、全然違っていたようで。
「成分が分子レベルまで残らないほどに希釈した水を使うという」って、つまり、ただの水。
そして「波動」「オーラ」「水の記憶」云々のキーワード。


かぶれやすいので、着るものは化繊は極力避けて綿・麻・絹の天然素材。
初期の風邪なら薬は飲まずにドリンク剤を飲んで早めに就寝して自然治癒を目指すし、咽喉の風邪の時は大根飴を作る(これは効く)。
できれば無添加の食材が好ましく、いろんな健康法を試すのはきらいじゃない。
実際、化繊を着ないようになってから、湿疹(アトピーですかねーとクリニックで言われた)がでなくなったりしたので、ケミカルなものをできるだけ忌避したいという心情はわからないでもないんだけど、何事も限度があるわけで。
ホメオパシーにハマるのは自然志向の強い人が主らしいけど、一般的な自然志向から「ただの水を含んだ砂糖玉」の効用を信奉するまでになり、さらには通常医療の否定に至る人の心理というのはあまりにも極端で理解しがたい。
ただ、世間には私が拒否反応を示す禁忌ワードに強烈に惹かれる人というのが少なからずいるようだし、「これさえやってれば自分は大丈夫」という安心を得たい人たちも多い。
一種の思考停止、自分の頭で考えることをやめた人たち。
そして、なんによらず恐怖心を煽ったり、恫喝まがいの表現で勧誘するのは、おおむねカルトといっていい。

ホメオパシーの提唱者はジェンナーと同時代の人だけど、真面目に医学的な研究をしていた人のように思われる。
まさか自分の研究に「波動」だの「水の記憶」だのという非科学的な概念が持ち込まれるなんて夢にも思っていなかったであろう。


それにしても、予防接種までも否定する人たちは、子どもの頃にパスツールやジェンナーの伝記を読んだりしなかったんですかね。
ワクチンだけでなく、ワインを安全に美味しく飲めるのはパスツールのおかげみたいなものなんだけど、そういうのも否定するんだろうか。
多田富雄・南伸坊の「免疫学入門」は自然治癒力を理解する一助にはなるけど、自然治癒力についての理解度があがったからといって、通常医療を否定しようという気には微塵もならない。
多田富雄自身が自然治癒力に頼りすぎた失敗例を語っているくらいだし。

追記:
ホメオパシー否定、広がる波紋=代替医療への影響も懸念
追記2:
ホメオパシーや統合医療の効果、厚労省で研究へ


 長妻昭厚生労働相は8月25日、ある種の水を含ませた砂糖玉を用いた代替療法「ホメオパシー」や、西洋医療に代替医療を加えた「統合医療」の治療効果について、厚生労働省で研究する方針を示した。横浜市内で行われた高齢者住宅の視察後の記者会見で明らかにした。


--中略--

 長妻厚労相は、日本学術会議がホメオパシーに対し、会長談話を通じて問題提起したことに関連して、ホメオパシーや統合医療の効果については厚労省内で研究するとした上で、「仮に患者の意思に反して病院に行かないようなことがあるとすれば問題。省内でも議論し、実態把握が必要であれば、それに努めていく」と述べた。


実態把握をしようというのは基本的には良いことである。
ただ、一番問題なのはこの発言のタイミング。
「厚労省内で研究」といったって、いずれ専門家に依頼することになるのだろうけど、当の専門家の集まりが「効果はない」とコメントを出した直後に、なんで大臣がこういう発言をするかな。
これじゃ擁護しているような印象を与えてしまうでしょ。
長妻厚労相に限らず、子ども内閣の皆さんは、閣僚の発言は真意だけでなく言い方やタイミングが世の中の動静に影響を与えるから要注意、という認識がなさすぎる。

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2010年8月23日 (月)

それではさっそくBuonapetito!

「テルマエ・ロマエ」が面白かった勢いでヤマザキマリのエッセイコミックも読んでしまった。
「モーレツ!イタリア家族」、「イタリア家族風林火山」、「それではさっそくBuonapetito!」の三冊。


☆「それではさっそくBuonapetito!」は料理エッセイ漫画。
著者の「美味い!」はほんとに美味しそう。
頭で語るのではなく、自分の感覚に正直な感じで、こういう人の「美味い!」は信頼できると思う。
エキストラバージンオイル、チーズ、バルサミコ酢、ポルチーニ茸のこだわりと薀蓄もいちいち頷けてしまう。

で、早速ムケッカ(魚貝のココナッツミルク煮込み)、豚肉のアレンテージョ風、黒豚のバルサミコソース、ツナと白いんげん豆のサラダ、パンツェネッラを作ってみたらどれもイケました。
豚肉のアレンテージョ風は、豚肉とハマグリ(アサリでも良いらしい)が新感覚で、でもとても美味しい。
パンツァネッラは、かたくなったパンを水で戻すというのが目からウロコであった。


☆「モーレツ!イタリア家族」と「イタリア家族風林火山」は、エピソードの面白さもさることながら、著者の「距離感」が好き。
「日本人である自分」と外国との距離のとりかたが絶妙。
家族の話は「モーレツ」なのだけど、住んでいる国との距離感やチャチャの入れ方に限っていえば、玖保キリコの「キリコ・ロンドン」とか村上春樹の「遠い太鼓」の読後感に似ているかも。

ワンステップ階段とか、飛び出す靴箱とか、舅の珍発明の数々には大爆笑。
お姑さんと小姑さんと友人たちが日本を訪れたエピソードは、村上春樹(だったと思う)が「イタリア人の団体にはかかわるな」とエッセイに書いていたことを思い出したりした。
少し前に見たNHKの「世界遺産への招待状~ベローナ」で、「花束の花一本一本にカードをつけて、そのカードを並べて解読すると愛のメッセージになる」というまわりくどく手の込んだプロポーズをするカップルを紹介していて、彼女のほうはほんとにうれしいんだろうか?と思ったけど、「イタリア人は愛のメッセージが好き」というエピソードを見ると、ほんとに喜んでいたみたいである。

著者のプロフィールはずいぶんと波乱万丈なのだけど、それでいて「こんなにユニークで非常識なワタシ」とか「こんなにダメな自分」が売りでないのが好ましい。
それと文章が上手い。
最近のエッセイって、「味がある」とか「個性的」と思うことはあっても、素直に「文章が上手い」と思えることって少ないんだけど。

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歩行者との事故に高額賠償判決

自転車:歩行者との事故に高額賠償判決…過失相殺認めず

自転車の車道走行ルールを厳格化するため道路交通法が改正された07年以降、自転車で歩行者をはねて死亡させたり重傷を負わせた場合、民事訴訟で数百万~5000万円超の高額賠償を命じる判決が相次いでいることが分かった。これと並行して東京や大阪など主要4地裁の交通事故専門の裁判官は今年3月、「歩道上の事故は原則、歩行者に過失はない」とする「新基準」を提示した。高額賠償判決がさらに広がるのは必至の情勢となる一方、車道走行ルールが浸透していない現状もあり、今後議論を呼びそうだ。


自転車専用レーンが整備されていない状況で自転車の車道走行を徹底するのは危険なのだけど、歩道を走る自転車の横暴ぶりが目に余るのもまた事実。
猛スピード、ヘッドホンステレオ装着、携帯使用、傘差し運転も後を絶たないし。
飲食しながらというのもの見たことがある。

何が何でも自転車は車道を走れとまでは言わないけど、「歩行者相手の事故の時は全面責任を問われて高額賠償を命じられることになりますよ」ということを周知徹底のうえ、くれぐれも歩行者の負担にならないように。
それと、ヘッドホンステレオ装着・携帯使用・傘差し運転(コンボの時もある)が交番の前を通った時くらい、警察は取り締まれよと思う。

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2010年8月18日 (水)

休暇分散 メリットない68%、デメリットは∞

http://www.nhk.or.jp/news/html/20100816/t10013372711000.html

政府は、地域ごとに時期をずらして5日間の連休を設定する「休暇の分散化案」の導入を検討していますが、これについて観光庁などが調査したところ、68%の人が「メリットは特にない」と感じていることがわかりました


政府は、大型連休に観光地に集中する旅行客を分散させ、家族で旅行しやすい環境をつくろうと、春と秋に全国を5つの地域に分けて、時期をずらして5日間の連休を設定する「休暇の分散化」の案をまとめ、導入を目指しています。これについて、観光庁と経済産業省は、ことし6月から先月にかけてインターネットで登録した全国の3000人余りを対象にアンケート調査を行いました。休暇の分散化で何がメリットと感じられるか聞いたところ、「メリットは特にない」と答えた人が68%を占めて最も多くなりました。一方で、「混雑が緩和され、旅行がしやすくなる」という答えは14%、「費用が安くなり、旅行がしやすくなる」は7%などとなりました。また、デメリットについては、「休日の異なる地域に住む家族や友人に会えなくなる」が27%、「休日の異なる取引先との連絡が難しくなり、企業の活動などに支障が生じる」が24%などとなっています。この結果について、観光庁は「厳しい意見が多かったと受け止めているが、国の試算では、旅行者が増えて1兆円の需要創出が期待できることなどの説明を続け、早ければ再来年の導入を目指したい」と話しています。


アンケートの結果をうけても、まだ導入をあきらめない観光庁には呆れてしまう。
この件に関する観光庁の見解を見ると、どうも観光以外の産業のことが一切視野に入っていないらしい。
24%が回答した「休日の異なる取引先との連絡が難しくなり、企業の活動などに支障が生じる」というデメリットは、ものすごく深刻なのだけど。
旅行は休みさえがあれば出来るというものではなく、先立つものも必要なのに、そこの視点がすっぽり抜けている。
休日を分散化する→企業の活動に支障が生じる→基幹産業が破綻→庶民の生活が苦しくなる→旅行どころじゃないよ、という危険性のほうが大きいのに、そこに思い至る常識とまともな思考力と想像力の持ち主は観光庁にはいないのか。
旅行者を増やしたいのなら、有給休暇をとりやすくするほうがよほど効果が大きいだろうに。

とにかく休日分散化案には絶対反対です。

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2010年8月16日 (月)

テルマエ・ロマエ

「鋼の錬金術師」の最新巻を買いに行った際、ついで(といってはなんだけど)に何冊か気になっていた漫画を購入。
その中の一冊がレビュー・ブログで見かけてタイトルと内容を覚えていた「テルマエ・ロマエ」。

面白いです、これ。
古代ローマの浴場専門の建設技師が現代の日本の風呂にタイムスリップして、その技術をローマの浴場に反映していく・・・という物語。
間が良いので、普通にギャグ漫画としても楽しめるけど、塩野七生の「ローマ人の物語」の「賢帝の世紀」のくだりを読んでいると、より一層楽しいかもしれない。
それと、ローマ遺跡観光も。
ツアーで行った南イタリアとトルコで遺跡を見すぎてお腹一杯になり、関心がフランスと中世に移行してしまった私ですが、これを読んで遺跡を見ていて良かったーとしみじみ思った。

ローマの遺跡に足を踏み入れるとを、おしなべて壮麗さに感動し「二千年前にこんなに高度なものを作っていたとはっ!!」と思うわけだけど、その壮麗な建築物に囲まれて快楽を享受していたローマ市民が現代の日本のお風呂でプラスチックの手桶や冷えたフルーツ牛乳に感銘を受ける、というのがいかにも愉快で、日本も捨てたもんじゃないな、と思えてくる。
漫画に出てくる「平たい顔族」が親切で善い人たちばかりなのもホノボノとうれしい。

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歸國

倉本聰脚本のドラマ「歸國」の大雑把な感想。
辛口であることを予めお断りしておきます。

ザッピングしながらなので細かい部分は見落としがあると思うけど、豪華キャストのわりにちょっとなーという内容。
出演者の演技はおおむね良かったし、夜の映像は美しかったけど、大看板の脚本がいろいろと残念だった。
終戦記念日に英霊たちが東京に現れるという設定はいいと思うのだけど、それをまったく活かせておらず、SFは約束事が大事なのにそのあたりがよくわからなかった。
最後の演説などは倉本聰の意見そのままだったけど、現代人を批判をしたいのなら、ただ一晩帰ってきただけの英霊に主張させずに、そういう趣向のドラマを書けばいい(見ないけどね)。
だいたい、いくらドラマとはいえ、たった一晩であんな大批判をするほどに現代の日本人の情報が得られるとは思えない。

それと、脚本として“普通に”稚拙。
石坂浩二演じる経済学者の描き方があまりにも極端で平面的だし、病院での少女の台詞の口調が時代錯誤で一体いつの時代?と思ってしまった。
まるっきり現代っ子の口調にしなくてもいいけど、もう少し落としどころというのがあるだろう。
倉本聰は子どもと接していないのか?

「北の国から」が好きでないので最近の倉本聰のドラマはまったく見ていないけど、以前は面白いドラマもたくさん書いていた。秀逸な脚色をした時もあった。
今回は富良野舞台のオリジナルドラマじゃないし(別に富良野に含むところはないけど)、以前の脚色の冴えみたいなものが見られるかなと思って見てみたのだけれど、思った以上にダメだった。
長いことインプットをせず、自分の世界で得意なことだけをしてくるとこうなる、という見本みたいな仕事ぶり。
年が年だから、といえばそれまでなんだけど。


翌日NHKで放送された「15歳の志願兵」の評判がよいけど見逃してしまった。
再放送してもらえないでしょうか。
できれば地上波で。

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2010年8月 7日 (土)

乱紋

絶版になっていた永井路子の「乱紋」が文春文庫から新装版で復活。
浅井三姉妹の末娘「おごう」を描いた歴史小説です。
永井路子の小説の常として文体や台詞には不満があるけれど、歴史の解釈とキャラクター設定は好き。
この小説の印象が強かったために「不器量で自己主張がなくて何を考えているかわからないけど、何故か夫たちには大切にされる女性」というおごうのイメージが定着し、「美人で気が強くてヒステリー」という従来のイメージとされるおごうを見ると違和感を覚えるようになってしまったほど。
この「不美人・おっとり」説にどうして影響されたかといえば、一番最初に目にした説というのもあるけれど、淀殿の妹にして徳川二代将軍の御台所という立場にいる人でありながら「美人」と明記された文献がないらしいし、同性からみてパッとしない地味な女性が実は男を夢中にさせる魔性の女というのはアガサ・クリスティも何度か描いていたりと説得力を感じるからである。

浅井三姉妹を描く大河ドラマ「江~姫たちの戦国」のキャストには魅力を感じつつ、小松帯刀をナヨ五郎に、将軍家定をトンデモ設定にしてしまったショックはいまだ尾を引いていて、配役は良いのに脚本にまったく期待できないことがとても悲しい。
「篤姫」は脚本の酷さ+主演女優の演技にも不満があったから、上野樹里ならなんとかなるんじゃないかと期待したいところだけど、主役がどんなに適役で好演しても脚本が迷走するとトンデモ作品になるのだということは、「最後の将軍」という立派な原作がありながら、歴史とは関係のない架空の話に時間をさき、原作の面白い場面を省略した「徳川慶喜」で思い知らされている。
まして「江」は原作という歯止めもないし。
今からでも脚本家交代してくれないかしら。


ところで、再来年の大河ドラマが「平清盛」とのこと。
「祇園精舎・・・」ではなく「遊びをせむとや生まれけむ、戯れせむとや生まれけん」をテーマにしたいという脚本家のコメントに「また奇を衒うのか?」と一抹の不安を感じたのだけれど、「梁塵秘抄」を引き合いに出すということは資料をしっかり読み込んでいるということだし、「名探偵赤冨士鷹」を書いた人なら時代の雰囲気を反映させてくれるだろう、と思い直した。
ただ、今様をテーマに持ってくるんだったら、まんま後白河院を主人公にしても面白いと思うけど。

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