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2011年2月 8日 (火)

白夜行(映画)続き

映画終盤の亮司の表情が忘れがたく、DVDが出るまで待ちきれないので2度目の鑑賞。
亮司=高良健吾の演技は見れば見るほど切ない。
そして映画のストーリー展開をわかったうえで見ると、笹垣=船越英一郎の感情の機微の表現の繊細さと、雪穂=堀北真希の人形のような表情によぎる微かな感情のさしひきが初鑑賞時よりもよくわかった。

最初の事件の捜査で笹垣が子どもたち(亮司と雪穂)に話しかける場面では、笹垣が子どもの警戒を解こうとしつつ、何事も見逃すまいとする様子にリアリティを感じた。
この時点で笹垣は雪穂と亮司を怪しんでいないし、子どもたちも笹垣を警戒していない。
でも、お互いの印象には残っている、という場面だから。

雪穂はあからさまに自分の欲望をむき出しにして、好き勝手なことをやり散らかすタイプの悪女ではなく、見かけは一点の染みもないお嬢さんタイプ。
なので「悪女に見えない」のは正解で、ただし、かといってまったく怪しくないのもNGなのだけど、堀北真希の人形のような無機質な感じの容姿が役にぴったりなだけでなく、そこはかとない陰翳を感じてとても良かった。
特に松浦と会った時、ラストの立ち去る時の表情は凄い。

※というか、見るからに「悪女タイプ」の人に犯罪を成功させることができるのであろうか。
怪しまれて目的を阻止されると思うんだけど。

で、基本的にネタバレ前提のスタンスですが、公開中の映画なのでちょっと下げます。


脚本で具体的に上手いなーと思ったのが亮司の切り絵と雪穂の手芸、それからモールス信号を謎解きに絡めたこと。
切り絵と手芸は原作にも出てくるモチーフで、特に切り絵は重要な役割を果たすけど、映画の「切り絵の図柄から笹垣が真相に辿りつく」という展開は非常に説得力があった。
これなら原作未読であってもおそらく腑に落ちる。
モールス信号は一昔前ならありふれた手段だったけど、今見ると新鮮だし、亮司のキャラクターにも時代背景にもあっている。
小学生がアマチュア無線1級に合格したというのがニュースになったこともあるし、頭の良い亮司と雪穂ならモールス信号を覚えて連絡手段にする、というのは納得がいく。
頭脳犯罪の要素が削られていたのは不満だけど、無線で補完したという見方もできるなと思った。
昭和55年当時はアマチュア無線3級ではなく電信級だったので、そこのところはちょっと甘かったけど、野暮はいうまい。

「真木栗ノ穴」にも感じたけど、深川監督は視覚が人の印象にどう残るかをわかっている人だと思う。
その可能性も限界も含めて。

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