王妃マルゴ、完結
萩尾望都の王妃マルゴが完結しました。
ジャック少年の登場には「こう来るか!」と膝を打ちました。
歴史ものなので登場人物の結末はわかっているのだけど、ジャックは実在ではあるけれどフィクションの部分が多いので、行く末が気になってしまった。
ヒロインのマルゴは知性と教養はありながら徹底した恋愛脳で、7巻の右往左往ぶりはかなり愚かしい。でも、だからこそリアリティを感じたりもする。
兄王たちは情緒不安定だし、ギーズ公は政治ではなく宗教のために行動していて、登場人物の中でちゃんと政治をしていたのは母后カトリーヌ・メディシスとナヴァルだけ。
その母后にしても必死でバランスをとろうとしていたけど、何を目指していたのかはわからないまま。
「大きなことばかり言う小さな弟」アランソン公の存在が意外と大きくて、マルゴや母后には軽く扱われているけど軍事的才能があるし、彼の死が三アンリの戦いの火蓋を落とすことになる。
母后がマルゴに対して冷淡な理由は具体的に語られず、心理を掘り下げると面白そうだけど想像の余地を残しているのもまた良かったりする。
7巻と8巻を読む間に佐藤賢一の「ブルボン王朝」を読みました。
カペー朝、ヴァロア朝に比べて、ブルボン朝の王たちはあまりにポピュラーすぎて興味がなかったのだけど、王家となる前のブルボン家についてのくだりが面白かった。
今まで知ることのなかったマルゴの姉たちが出てきたのも興味深かった。
エリザヴェートはオペラの登場人物にもなっているし、みんな劇的。
ギーズ公の母アンナ・デステがルクレツィア・ボルジアの孫で、したがってギーズ公アンリは曾孫なのが塩野七生のルネサンスものを愛読した者としては格別な感慨があります。
アンリエットの夫のヌヴェール公はイザベラ・デステの孫だし、「ルネサンスの女たち」の後日譚として読んでも面白いです。
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