ドライブ・マイ・カー
「トニー滝谷」が好きなので、原作が村上春樹で主演が西島秀俊となれば是非みたい。
西島秀俊は映画館に出かける動機になる俳優だし、見た作品については概ね満足しているけど、この映画は久々の真打ちという感じ。
PG12であることも含めて、西島秀俊が役とがっぷり四つに組んで不足なし。
原作の「女がいない男たち」は文庫を積読していたのを、「ドライブ・マイ・カー」を観に行く前に、残りは鑑賞後に読みました。
それから「ワーニャ伯父さん」も。
物語のおおまかな設定は把握しつつ、細かいモチーフは知らない状態で映画を見たので、わりと先入主なしに楽しめた気がする。
普通、短い話を膨らませると、どこかに無理やりな感じとか齟齬が生じるものだけど、それを感じさせないのが凄いと思う。
カンヌの脚本賞の評価に納得、です。
二人の生活や会話が丁寧に描かれているので、主人公と妻が心から愛し合っていることは主人公の主観だけではなく客観的事実として観客は感じることができる。
だからこそ妻の行動は謎だし、主人公の苦しみもリアリティがある。
三浦透子の渡利みさきは原作のイメージそのまま。
高槻は原作よりも複雑で多面的。
「容姿にも才能にも恵まれて、人気もあるのに自制できずに自滅する俳優」ってリアルにいるなと。
「ダンス・ダンス・ダンス」が映画化されるのなら五反田君を岡田将生に演じて欲しい。
「大豆田とわ子と三人の元夫」も、時として凄みを感じるくらい良かったけど、この映画の後ならば納得。
何度も車で往来する広島の夜景が美しかったです。
車の中、亡き妻の声で流れる「ワーニャ伯父さん」が登場人物の心理とシンクロするのが面白かった。
特に、舞台のラスト、ソーニャの台詞が音ではなく手話で語られるのが印象的。
ワーニャ伯父さん、生きていきましょう。長い長い日々を、長い夜を生き抜きましょう。運命が送ってよこす試練にじっと耐える の。安らぎはないかもしれないけれど、ほかの人のために、今も、年を取ってからも働きましょう。そしてあたしたちの最期がきたら、おとなしく死んでゆきましょう。[チェーホフ. ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫)より]
「そしてあたしたちの最期がきたら、おとなしく死んでゆきましょう。」というところに逆に生き続ける覚悟を感じてグッときてしまいました。
「俺の家の話」もそうだったけど、古典作品をモチーフにする手法はかなり好きです。
本歌取りっていうのか。
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