ハウス・オブ・グッチ
生活はグッチとは一切縁はないけれど、わりと公開を心待ちにしていた映画。
かいつまむなら財を成した家の盛衰と階層が違う結婚の悲劇、だろうか。
ロドルフォ・グッチ役のジェレミー・アイアンズのスーツの着こなしが相変わらず貴族的でエレガント。
実業家だった兄のアルド役のアル・パチーノとの対比もいい。
ロドルフォの一人息子マウリツィオ役はアダム・ドライバー。
「ドンキホーテを殺した男」以来、アダム・ドライバーを映画館で見る頻度が高い。
今回の御曹司役が一番好きかもしれない。
ダブルブリッジ(っていうの?)の眼鏡は鼻が隠れるし。
そして、パトリツィア役はレディ・ガガ。目の演技が印象的だった。
マウリツィオと出会った頃のイケイケな70年代のファッションが魅力的だけど、好みが変わらないままなので、90年代になると「大阪のおばちゃん」状態に。
モデル体型ではないので生活感というかリアリティがあるのです。
清潔感はあって無難だけどお洒落ではなかったマウリツィオの服装がだんだん洗練されていくので、二人の外見の違いが夫婦の溝と二人の育ちの違いの表現にもなっていた。
サンモリッツの場面、マウリツィオの友人たちの中で、リゾート地なのに装飾性の強いファッションで現れ、噛み合わない会話で浮き上がってしまうパトリツィアにいたたまれなさを感じてしまった。
父ロドルフォの反対を押し切ってパトリツィアと結婚したマウリツィオは、中・下流の生活にもわりと馴染んで満足もしていたと思う。
でも、パトリツィアの意向でグッチの事業と関わることで上流社会に戻り、昔の友達に会うことでパトリツィアとの違いが気になるようになってしまう。
「ステラ・ダラス」もそうだったけど、ヴァイタリティで生きている下層出身者って、上流出身の恋人を自分の生活に引き込むことには成功するけど、自分が上流社会に入り込むことには失敗するよね、と思いながら見ていた。
で、思い通りにならなくて殺人に至るわけですが。
パトリツィアが野心家で財産目当てだったのは確かだけど、それならば愛がないのかといえばそうとも言えず、マウリツィオを愛してはいた。財産やバックボーン込みだし、愛ではなく妄執かもしれないけど。
マウリツィオを殺したのも、彼がグッチの経営権を失った後だし。
それにしても、「親の助言は聞け」「クリムトをピカソと間違える相手と結婚してはいけない」に尽きますね。
音楽が良かった。サントラを買おうかと思ったけど、手持ちの曲でプレイリストが作れそう。
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