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2022年2月19日 (土)

「愛のムチ」とは、殴る側だけが使う言葉である

北京五輪・フィギュアスケート女子シングルFS、ワリエワ選手演技後のトゥトベリーゼの叱責が物議を醸していることについて。

コーチの言葉の意図を「どんな状況でもベストを尽くせ」と善意に解釈して擁護している人がいるけど、無理があるってものです。
「愛のムチ」という解釈も同じく。

それと、コーチの言動を批判する人は「厳しいコーチング」を否定しているわけじゃないですよ。
時によっては厳しくすることが愛情の場合もあるけど、今回は違うということ。
本人が禁止薬物の摂取を自覚しているのなら速やかに出場辞退すべきだったし、本人が関与していないのなら周囲が矢面に立たないように配慮すべきだった。
それもしないで叱責はないだろうということ。


ワリエワのドーピング問題 ロシア国内では根強い欧米の陰謀論
https://news.yahoo.co.jp/articles/3f878990f5a2bc486d1742e4b0551f44a38df0bd
「人は自分の鏡」みたいな話。

採点方式等で駆け引きみたいなのはあると思うけど、ロシア以外の国は日本も含めてそんなにガツガツしていない。
以前にアメリカのフィギュアの金メダリストOBのセレモニーを見たけど、医師とか弁護士、会社経営者が多くてセカンドキャリアがしっかりしている印象。
フィギュアスケートに関しては、アメリカの優先順位は「教育>スケート技術>ジャンプ」で健全だと思う。
個人レベルとか、他のスポーツのことは知らんけど。


バッハ会長、選手の年齢制限引き上げ示唆
https://news.yahoo.co.jp/articles/5db6cf57047598866233f77eb0decd6d283e94f4

ドーピング問題の根本的な解決にはならないけど、ドーピング保護規定と出場資格の乖離は解消できるし、「子どもに薬物を使ってトレーニングをしてジャンプを跳ばせても五輪に出られないよ」という牽制にはなるかな。

【北京冬季五輪】 IOC会長、「ぞっとした」 ワリエワへのコーチ陣の対応に(BBC News) - Yahoo!ニュース
これについては同意。
ただ、これほど選手に対して思いやりがあるのなら、東京五輪も酷暑の夏ではなく10月にする配慮が欲しかった。

トゥトベリーゼコーチについて、リプニツカヤ・メドベージェワまでは厳しいけど優秀なコーチなんだなという感想しかなかったけど、ザギトワの得点が1.1倍になるプログラム後半にジャンプ固め打ち戦略が成功してしまったことで、何かタガが外れたんじゃないかと思った。
この戦略の先駆者は安藤美姫だったけど、「グリーグのピアノ協奏曲」はプログラムのバランスには配慮していた。
ザギトワの「ドン・キホーテ」はそこを度外視した美意識の欠片もないプログラムだったから、「これを選手に滑らせるコーチって、勝つことしか考えていないんだ」と感じたのでした。

ところで、ドーピングの報道が出る前、競技年齢の若年化に町田樹が警鐘を鳴らしていた。

【町田樹解説】フィギュア競技年齢の若年化に危機感「選手人生が長く続かぬ競技に希望ない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/e5ea7089eee4e7bb756e2b30527f70741fe47b99

ドーピング問題と選手の若年化は直接関係はないけど、今回いろいろ紛糾したのは16歳以下の保護規定があるが故だし、長く選手でいようと思えば(いさせようと思えば)薬物の摂取はしないしさせないと思う。

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