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2023年12月15日 (金)

脚本と史実と物語と

大河ドラマ「どうする家康」、最終回はまだだけど振り返ってみる。

で、良かったところ。
・松山ケンイチの本多正信
・山田孝之の服部半蔵と服部一党
・溝端淳平の今川氏真
・眞栄田郷敦の武田勝頼
・ムロツヨシの豊臣秀吉(特に晩年)
・北川景子のお市と淀殿
まあ、俳優陣は総じて悪くない。

・三河一揆
・大政所の秀吉への恐怖心
 高畑淳子の演技も良かったし、これはちょっと新鮮だった。
・伏見城の鳥居元忠と千代

好みじゃなかった描き方
・織田信長
 こういう描き方もアリとは思うが好みではない

脚本としてダメだと思ったことの数々
・今川義元の退場が早すぎる
・動機にいちいち恋愛を絡める
 (お市の初恋が家康、茶々の王子様が家康、信長も・・・)
・確たる理由もなく主人公を持ち上げる
・瀬名の平和構想
 信長の楽市楽座は無視ですか。
・後付けの回想の数々
・金ケ崎の走れ阿月
 その後、長篠の戦で鳥居伝衛門のエピソードが出てくることを執筆時にわかっていなかったとしか思えない。年表を作らなかったのか。
・「戦なき世」の連発
 家康のやったことを思えば、これこそ最後の最後に呟くくらいでいい。

脚本家が歴史に興味がないと、こういう話を作ってしまうのか、のオンパレード。
たぶん史料を読んでも退屈だったのだろうな。
近代史だから視聴率は低かったけど、「いだてん」は日露戦争後から東京五輪までの近代から現代の史実をかなり細かく拾っていて、「俺の家の話」における「能」とか、クドカンは資料を読み込むタイプなのだと思った。
柄本佑演じる増野が関東大震災で妻を亡くした喪失感から立ち直るところ、ロサンゼルスオリンピックとベルリンオリンピックの明暗を際立たせた演出など、虚実の織り交ぜ方も良かった。森山未來の一人三役も凄かったし。

「どうする家康」は史実無視もさることながら、オリジナルだとしてもいちいちエピソードが面白くない。
図らずも(図ったのか)時を同じくして放送された「大奥」がファンタジー設定ながらというか、ファンタジーだからこそ綿密に練られたドラマで、だからこそ余計に「どうする家康」のダメさを感じてしまった。
史実からすれば和宮が勝と西郷の会見に出て来るはずもないんだけど、錦の御旗と御宸翰で西郷を変心させる流れが物語として説得力があった。
「大奥」の史実の描き方に全部納得しているわけではなく、慶喜についてはちょっと酷いと思っている。でも、慶喜の行動はあのとおりだし、当時の大奥の人に目にああいう風に映っても仕方がない。
慶喜の行動の矛盾をちゃんと説明するには水戸藩のことを詳細に描かなくてはならないけど、そこまですると大奥の話ではなくなってしまうから、そこは史実を検討した上でのストーリーテリングに必要な取捨選択だったと納得できるのです。

でも、今年の大河はことごとく「取ってつけた」感が否めない。
秀忠の手を汚させない、みたいなのも、去年の鎌倉殿は義時の八重への愛情をこれでもかっていうくらいの描いていたから、八重の子である泰時への思い入れを視聴者が自然に受け入れられるけど、「どうする家康」は瀬名ラブ設定で描いているし、秀忠は初陣でもないのでただただ唐突。

「篤姫」「江」「天地人」「花燃ゆ」もたいがい酷かったけど、脚本家の他の作品に思い入れはなかったので大河そのものへの失望感だった。
でも、今回は「相棒」「リーガルハイ」「コンフィデンスマンjp」の脚本家がこれなのかと、ほんとに「駄目になった王国」の残念さを感じています。

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