カテゴリー「アガサ・クリスティ」の11件の記事

2016年12月 3日 (土)

運命の裏木戸、猿の困惑

アン・ブックスと細雪とアガサ・クリスティを不定期に読み返すんですが、しばらく前からクリスティのトミーとタペンスシリーズに入っていて、今はラストの「運命の裏木戸」を読んでいるところ。
何度となく読んでいるのに、「秘密組織」の出版が大正11年だとか、今更ながらの発見がいくつかあった。
小川未明の「赤いろうそくと人魚」が大正10年なので、その翌年なのか。
小川未明とアガサ・クリスティが同時期に作品を発表していたというのが不思議な感じ。
新見南吉の「ごんぎつね」よりも「秘密組織のほうが先なのですね。

「運命の裏木戸」では、タペンスがリチャード三世善人説に言及する場面などもあったり、ストーリー以外のタペンスの述懐が面白い。
中に出てくる「チリー杉」って、以前は「そういう杉があるのだな」と漠然としたイメージだったけど、これってもしかしてチリ松のことでは?と思って原文を調べてみたら「Monkey Puzzle」でビンゴ。
ついでにパンパスグラスも検索したら、いつか皇居東御苑で見かけた羽箒のような植物がそれだった。和名は「シロガネヨシ」。
トミーとタペンスの家の周囲にチリ松とパンパスグラスがあったのかと思ったら、ちょっとうれしくなった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年5月 5日 (火)

ポワロと非クリスティなドラマ

連休に入り、AXNミステリーの名探偵ポワロの連続放送を見ています。

「青列車の秘密」はわりと大胆な脚色。
ミレーユが設定も性格も原作とは全然違うけど、原作どおりのミレーユが出てきたら、かなりうっとうしいだろうから、これはアリだな。
許容範囲なんだけど、キャサリン・グレイとデリク・ケッタリングは、もう少し原作寄りが良かった。

「マギンティ夫人は死んだ」は比較的原作に忠実。
ウェザビイ家を割愛したのはドラマ的には良かったかも。
原作のアリアドニ・オリヴァ夫人はそんなに好きではなかったんだけど、ドラマではゾーイ・ワナメイカーが良い味を出している。
このイメージで読めば良いのか。
吹き替えの声も雰囲気が出ているなと思ったら山本陽子でした。

オリヴァ夫人の人気小説を戯曲化する話が持ち上がり、その作業に協力するためにオリヴァ夫人は脚本家の自宅に滞在することになり、同じ村に偶然居合わせた旧知のポワロの捜査に協力するのだけど、原作を無視してとんでもない改変をしようとする脚本家と、それを阻止しようとするオリヴァ夫人のやりとりが面白い。
最初に読んだ時は、脚本家のアイデアがあまりに突拍子もなくて「こんなこと、本当にあるの?」と思ったけど、トンデモ改変されたドラマを何度か見ることになろうとは。

で、ベネディクト・カンバーバッチ目当てで見た「殺人は容易だ」なんですが、そういうトホホな改変をされたドラマでした。
ベネ様の声が聞きたいし、原作を読んでいるからストーリーはわかるだろうと副音声で見たら、なんだかよくわからない。原作の重要な人物が出てこないし。
見逃したのかと思って、もう一度再生してみたけど、やはりホイットフィールド卿が出てこないし、犯人の年齢設定もキャラクターも違う。
で、ネタバレしてくださっているサイトのお世話になったけど、読んでびっくりである。
なんだか横溝正史かバーナビー警部みたいな話に変わってる。
まあ、ミス・マープル物ではない話にミス・マープルを出すわけだから多少の設定変更はあるだろうと思っていたけど、ここまでとは。
動機を全面的に変えちゃダメでしょ。

「ゼロ時間へ」は雰囲気は良かったけど、スケッチ旅行って最早ミス・マープルじゃないし。

探偵と役名を大幅に変えながら、動機は原作どおりのフランス版クリスティの評価が上がってしまいました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月12日 (土)

警部とか警視とか

これまで見るタイミングを逃していた「予告殺人」(ジョーン・ヒクソン版)をようやく見ることができました。
ミス・マープル物のドラマでは、これと「鏡は横にひび割れて」「パディントン発4時50分」「スリーピング・マーダー」が完成度が高いと思う。
といっても、他の作品もジョーン・ヒクソン=ミス・マープルと古い街並みと洒落た会話が楽しめるので、それなりに好きなのだけど。

クラドック警部の部下フレッチャーに見覚えがあると思ったら、ルイス警部を演じているケヴィン・ウェイトリーではないですか。
ここでも良い味をだしていた。


その「ルイス警部」はルイスと部下のハサウェイ部長刑事のかけあいが面白い。
「主任警部モース」はインテリ上司と叩き上げの部下だったけど、今度は「叩き上げの上司とインテリの部下」コンビ。
「主任警部モース」は、モース自身がいわばオックスフォードの象徴のようなキャラクターだったからかオックスフォードらしくないエピソードもあったけど、ルイスが主人公になった分、物語の中で街や大学の果たす役割が大きくなっているような気がする。

ファンタジーにシェイクスピアにバーナード・ショーと、引用がたくさん出てくるけれど、そういう中で戸惑うルイスと、さらりと引用元を口にするハサウェイが面白い。
クリスティの登場人物も外国人のポワロ以外はしばしば古典の引用をするけれど、そういうのも楽しみの一つだったりする。


ハサウェイ役のローレンス・フォックスはジェイムズ・フォックスの息子ということで、お父さんの出演映画も何本か観ているはずなんだけど、伯父さんがエドワード・フォックスと知ってそっちに驚いた。
そーいえば伯父さんに似ているような気もする。

同じく「叩き上げの上司とインテリの部下」という組み合わせの「ダルジール警視」、部下のパスコー役のコリン・ブキャナンが「蒼ざめた馬」のマーク役だったと知って驚いた。
髪型と服装が違うだけでまるで別人に見える。

「蒼ざめた馬」は物語としては原作に忠実だし面白かったけど、マークの設定を学者から彫刻家に変えた理由がわからなかった。
パスコーだったら学者でもよかったのに。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月11日 (金)

奥様は名探偵

アガサ・クリスティの「親指のうずき」のフランス版。
ミス・マープル及びトミーとタペンスのシリーズは英国を舞台にしてこその面白さだと思うので、基本的には海外作品は好まない。
でも、AXNミステリーで放送された「奥様は名探偵」をフランス語の勉強代わりにと観てみたら、これが意外と面白かった。
サヴォワ地方の風景はきれいだし、笑える場面や台詞がふんだんにあるし。
本家・英国製作のクリスティのドラマもクスッとする場面は随所にあるのだけど、フランス版はゲラゲラ笑ってしまうのがお国柄の違いだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年3月24日 (水)

鏡は横にひび割れて

AXNミステリーでジョーン・ヒクソン版を視聴したので、ドラマと原作を織り交ぜての感想をちょっと。

この物語の初見は映画「クリスタル殺人事件」。
適当な日本語タイトルもさることながら、ミス・マープルを演じたアンジェラ・ランズベリーはイメージと違うし、豪華キャストのわりに印象に残らなかった。
この時はプロットも動機も「だからどーした」と思ってしまったのだけど、原作を読んでみたら、今度は胸にグッときたんであった。
この物語で一番印象的なのは殺人の動機、それから被害者のキャラクター。

往年の名女優マリーナ・グレッグがセント・メアリーミードの豪邸を購入、パーティを開く。
パーティに参加した村人の一人バドコック夫人がマリーナのカクテルを飲んで死亡し、当初はマリーナを狙った犯行と思われていたが、真相は被害者が得意そうに語った思い出話に隠されていた。
その思い出話とは、自分は昔からマリーナの熱烈なファンで、入院中の病院を抜け出して会いに行ったことがある、というもの。
マリーナは前夫との間に障害を持った子どもがいて、病院に入ったまま。
バドコック夫人の昔の病気というのは風疹だったのだけれど、マリーナは、彼女が妊娠初期の自分に会いにきたことが子どもの障害の原因だったと知って・・・。

エネルギッシュで親切で世話好きだけど独善的で、時として他人にとって迷惑な存在で、それでいて本人には悪意など微塵もない、バドコック夫人のような人は珍しくもない。
平凡な女性の軽率な行動が、少なくとも二人の人間の人生に修復しがたいダメージを与えてしまった、ということが心にずっしりと響く。
妊娠初期の女性への風疹の影響は知識として知っていたけれど、これを読んで、こんな悲劇も起こりうるのだと認識を改めた。

「深刻な事態を生じうる軽率な行動」というと、伝染する病気で歩きまわるのもそうだけど、飛行機の中で携帯を使うこと(携帯使用許可の機種は別)、傘さし運転もこれに当る。

テレビ版は、変化しつつあるセント・メアリー・ミードの村、人は好いけど押しつけがましい付添い人に戸惑うミス・マープルの様子をきちんと描いているし、マリーナ・グレッグ役のクレア・ブルームは、「神経が繊細で、エキセントリックな面と人を逸らさぬ魅力を合わせ持つ往年の名女優」のイメージに合っている。
クレア・ブルームならバントリー夫人がシャーロット姫を連想するのもわかるし。
映画版のエリザベス・テイラーは、往年のスターにはぴったりだったけど、エキセントリックというよりもヒステリックな印象で、あまりピンとこなかった記憶あり。

織物は飛び散り、ひろがれり
鏡は横にひび割れぬ
ああ、呪いは我が身にと
シャーロット姫は叫べり


Out flew the web and floated wide;
The mirror crack'd from side to side;
'The curse is come upon me,' cried
The Lady of Shalott.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月 3日 (日)

ミス・マープル~普通が意外

ミステリー・チャンネルで「復讐の女神」を放送していたので録画。
基本的には海外ドラマや映画は字幕で見たいほうなのだけど、このジョーン・ヒクソン/山岡久乃の組み合わせは大好きです。

「復讐の女神」は、原作の訳には大いに不満があるのだけど、ドラマはそこが気にならないし、バスツアーで巡る英国の古い邸宅と庭園の数々が見られてうれしい。
ただ、マイクルとヴェリティについて語られる部分が省略及び単純化されていて、「ポケットにライ麦を」もそうだったけど、原作の印象的な部分、複雑で奥行きを感じる箇所が削られてしまったのが残念。
ドラマとして物語を展開するためにはしかたのないことなのかもしれないけど。
原作についてつらつらと述べたエントリはこちら

時を同じくしてミス・マープルの新作が放送中。
ピーター・ユスチノフのポワロもあることだし、配役についてはジェラルディン・マクイーワンの小妖精みたいな容貌のマープルもありと思う。
ただ、ユスチノフ版はなんだかんだいっても「几帳面、神経質、マイノリティ」といったポワロの特徴ははずさなかったんですよね。
でも、新作マーブルの、ミス・マープルが妙におしゃれなだったり、恋人の写真(多分、若くして戦死か何かしている?)を持っていたり、チャンドラーの小説を読んでいる、という設定はいただけない。
ヴィクトリア朝の価値観、温和で上品な外見や物腰の、一見どこにでもいそうな「田舎の老婦人」でありながら、身も蓋も無いまでのリアリスト、ごく狭い世間の中で暮らしながら観察眼の鋭さで事件の真相を見抜く、という意外性こそがミス・マープルの魅力。
そこに「過去のロマンスを胸に秘めていて、(アメリカの小説を読むような)新しいものへの好奇心も旺盛」などという要素を入れたら、ただのハイカラおばあさんの話になってしまい、ミス・マープルという人物の持つ特異性、意外性が消えてしまう。
ハイカラおばあさんの話にしたいのなら、いっそ「ル・テスク家の人々」みたいに原案ということにすれば良かったのに。

ジョーン・ヒクソン版の素晴らしいところは、外見がマープルのイメージにぴったりというだけでなく、原作で描かれているマープルの個性を「何も足さず、何も引かず」に表現しているからだと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月 7日 (月)

ポケットにライ麦を

今、ミステリ・チャンネルでアガサ・クリスティ原案(←)の「ル・テスク家の殺人」というフランスのドラマを放送している。
「ポワロのクリスマス」を下敷きにしていて、面白いといえば面白いのだけど、わずかな設定を除いて、もはや「何の話だ?」という変りよう。
原作は読んでいても、ドラマの犯人が誰なのか見当もつかない状態です。
と思ったら、最終回の謎解きの部分は見事に原作通りだった。
で、「原作」扱いでこれだと「えーーー」と思っただろうけど、「原案」というのがミソですね。

※「篤姫」も「徳川慶喜」も「功名が辻」も原案にすれば、もう少し大目にみられたかも。


クリスティ作品では、ミス・マープルの長編シリーズも放送中。

アガサ・クリスティは手当たり次第に読んでいるのだけど、本をすべて手元に置いておくと片付かないので、読み返さないだろうなーと思うものは実家に送っている。
その中で「ポケットにライ麦を」(ドラマは先々週放送)は、送ってしまうか手元に残すかで悩んでしまう本。
今のところ手元にあるのだけど、内容自体はクリスティの中ではそんなによくないのです。
伏線の張り方が中途半端だったり、話の展開に強引さが目立ったり。
それを何故手放せなかったかといえば、ひとえに終盤の一節が印象だったがゆえ。

以下、ネタバレ

続きを読む "ポケットにライ麦を"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月30日 (木)

スリーピング・マーダー

ミステリー・チャンネルで放送していたアガサ・クリスティ原作の「スリーピング・マーダー」を見ました。
「回想の中の殺人」というプロットの、重要ではないと思われていた出来事や言葉が、見方を変えるとまったく違う意味を持つ、ということを発見したり、汚名を着せられていた死者が名誉を回復する過程が好きです。
その中でも「スリーピング・マーダー」は出色。

ジョーン・ヒクソンのミス・マープルは原作から抜け出たよう。
日本語で声を吹きかえているのが故山岡久乃で、ホームドラマで見るお母さん役や婦長さん役の山岡久乃はミス・マープルのイメージではないのですが、この吹き替えは声のトーンや口調を微妙に変えていて、ミス・マープルにぴったり。
このシリーズの字幕で放映された作品で、ジョーン・ヒクソンの声を聞いて違和感を感じてしまったくらいでした。
ジョーン・ヒクソンの声と話し方はフワフワとつかみどころがなくて、原作の本来のイメージからすると、このほうがミス・マープルらしいといえるのだけど、聞きなれると山岡久乃のほうがミス・マープルらしく感じてしまったから不思議。
アニメ版の八千草薫もかなり良かったのだけど、ミス・マープルって「優しくて上品」というだけではない、シビアなところもあるキャラクターなので、そこのあたりの奥行きは山岡久乃のほうが出せていたと思う。
このミス・マープルは、露口茂のシャーロック・ホームズと並ぶ好配役でした。

続きを読む "スリーピング・マーダー"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年1月16日 (月)

ミスキャストっていうか

録画しておいた「名探偵ポワロ」4本を見ました。
全部原作を読んでいるのでストーリーは知っていて、私にとってのドラマの見所はキャストや衣装とセット、それからどんなふうに脚色したか、というあたり。

「ナイルに死す」は以前にも書いたとおり、エンディングの演出がとても秀逸。
原作の描写をそのまま使いながら、原作よりも余韻が残る終わり方。

続きを読む "ミスキャストっていうか"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年1月 6日 (金)

復讐の女神

夏に見逃してしまった「名探偵ポワロ」がBS2で再放送されます。
 「ナイルに死す」   1月 9日(月)深夜【火曜午前】1:00~2:39
 「杉の柩(ひつぎ)」 1月10日(火)深夜【水曜午前】0:30~2:04
 「五匹の子豚」    1月11日(水)深夜【木曜午前】0:30~2:04
 「ホロー荘の殺人」  1月12日(木)深夜【金曜午前】0:30~2:04

「ナイルに死す」については心に残るラストシーンだったので感想を書いたけど、台風のため録画した大部分が砂の嵐だった。
今回再放送される4本は、アガサ・クリスティの中でも特に人間の描写がこまやかで好きな作品ばかり。
その中でも「杉の柩」と「五匹の子豚」は特に好きで何度も読み返している。

ところで、アガサ・クリスティでなんとなく思い浮かんだことを書いてみる。
放送される作品とは関係なく、おまけにミス・マープルものですが。
「復讐の女神」と「スリーピング・マーダー」についてですが、これから読まれる予定のかたはネタバレになるかもしれません。ご注意を。

続きを読む "復讐の女神"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧