カテゴリー「漫画/アニメ」の21件の記事

2020年3月14日 (土)

王妃マルゴ、完結

萩尾望都の王妃マルゴが完結しました。
ジャック少年の登場には「こう来るか!」と膝を打ちました。
歴史ものなので登場人物の結末はわかっているのだけど、ジャックは実在ではあるけれどフィクションの部分が多いので、行く末が気になってしまった。
ヒロインのマルゴは知性と教養はありながら徹底した恋愛脳で、7巻の右往左往ぶりはかなり愚かしい。でも、だからこそリアリティを感じたりもする。
兄王たちは情緒不安定だし、ギーズ公は政治ではなく宗教のために行動していて、登場人物の中でちゃんと政治をしていたのは母后カトリーヌ・メディシスとナヴァルだけ。
その母后にしても必死でバランスをとろうとしていたけど、何を目指していたのかはわからないまま。
「大きなことばかり言う小さな弟」アランソン公の存在が意外と大きくて、マルゴや母后には軽く扱われているけど軍事的才能があるし、彼の死が三アンリの戦いの火蓋を落とすことになる。
母后がマルゴに対して冷淡な理由は具体的に語られず、心理を掘り下げると面白そうだけど想像の余地を残しているのもまた良かったりする。

7巻と8巻を読む間に佐藤賢一の「ブルボン王朝」を読みました。
カペー朝、ヴァロア朝に比べて、ブルボン朝の王たちはあまりにポピュラーすぎて興味がなかったのだけど、王家となる前のブルボン家についてのくだりが面白かった。

今まで知ることのなかったマルゴの姉たちが出てきたのも興味深かった。
エリザヴェートはオペラの登場人物にもなっているし、みんな劇的。

ギーズ公の母アンナ・デステがルクレツィア・ボルジアの孫で、したがってギーズ公アンリは曾孫なのが塩野七生のルネサンスものを愛読した者としては格別な感慨があります。
アンリエットの夫のヌヴェール公はイザベラ・デステの孫だし、「ルネサンスの女たち」の後日譚として読んでも面白いです。

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2014年12月27日 (土)

ライブベストとReマスター

収録曲が「Sugi Rock Fes」、会場限定CDと被るためちょっと迷ったけど、新しいライブ音源をCDから取り込める便利さは捨てがたい。いちいちリッピングするのは面倒だから。
で、発売日の会社帰りにCDショップに寄ったら、置いてない。二軒目もない。
「発売日に置いてないなんて」とぷんすかしながら帰宅してAmazonにアクセスしたら「一時的に在庫切れです」の表示。
セブンネットショッピングで入手したけど、置いてなかったのが売り切れならちょっとうれしい。その状態が続くのは困るけど。

そういえば先月の終りに発売になった「MASTERキートン Reマスター」を発売後一週間くらい経って買いに行ったら最寄の書店に置いてなく、アマゾンでも在庫無し。
その後、家族が立ち寄った書店に置いてあるのを見つけて確保してくれたので無事入手でき、今では最寄の書店にも平積みしてありますが。
「MASTERキートン」というとオトナの事情()の絶版で長らく入手できなかった時期があったので、ちょっと焦りました。

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2012年4月18日 (水)

三国志魂

荒川弘・杜康潤の「三国志魂(スピリッツ)」を読了。
「百姓貴族」にもチラッと出てきたので、三国志好きなんだ~と思っていたけど、こんなに好きだったのかっ!!!という、三国志への愛にあふれた本です。
あらすじ・二人の対談・登場人物の紹介・4コマ漫画で構成されていて、読み応えたっぷり。
かなりマニアックですが、好きな人が好きなことについて語るのを読むのは大好き。
荒川弘の三国志の登場人物評を見ると、「鋼の錬金術師」のキャラクター造型が立体的だったのが頷ける。

私自身の三国志の知識は子供向けのダイジェスト版を読み、映画レッドクリフを見た程度(ファミコン三国志はゲーム開始直後に攻め滅ぼされて挫折)・・・と思っていたら、本のPDF化の作業で「読み切り三国志」を発掘。
目次を見てみたら、コンパクトながら後漢末期から晋までしっかりまとまっていて、文章も読みやすく、良い本じゃないか(読んだことを忘れていたけど)。

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2011年10月19日 (水)

違和感なさ過ぎておかしい

映画テルマエ・ロマエ、北村一輝ら顔濃い俳優がローマ人に
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/10/19/036/index.html

ハリウッドも昔は「アラビアのロレンス」のアレック・ギネス(ファイサル王子)みたいな力技を使ったものだし、阿部寛のルシウスには納得しつつも、一体どんなふうになるんだろうと思っていた映画「テルマエロマエ」ですが、写真を見ると驚くほど違和感がなく、あまりの違和感のなさに笑いが止まらない。
変で笑うのは普通だけど、しっくりしすぎておかしいとは。

この中で、市村正親は顔自体が濃い人ではないのに、こんなに似合うって、どれだけ存在感が濃いんだろう。

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2011年7月19日 (火)

銀の匙 Silver Spoon 1巻

百姓貴族の農業高校ネタが面白かったし、連載開始時の電車の中吊りの絵柄も好みだったので、コミックが出るのを待ちかねていた。
主人公も可愛いけど、馬がめちゃめちゃ可愛い。しかもリアル。
絵がうまくても馬をリアルにかつ可愛く描けるとは限らなくて、リアルな人の絵は可愛さに欠け、可愛い絵はリアルさに欠けるのが常なので、荒川弘だから絵がうまいのはわかっていたけど、こんなにリアルかつ可愛い馬の絵を見ることができるとは。
ちなみに、これまでに漫画で描かれた馬の絵で好きなのは小道迷子とよしだみほだけど、どちらもリアルではない。
百姓貴族を読んだ時は豚の生姜焼きを食べたくなったけど、今度は卵かけご飯と豚丼を食べたくなった。
獣医学部を舞台にした「動物のお医者さん」も好きだったけど、「銀の匙」は農業高校ならではのエピソードで、また一味違った面白さ。
八軒君が家から離れようと思った理由とか家庭環境は未だ出てきていないけど、添加物の無いスモークチキンを美味しいと感じる味覚の持ち主だから、食事に気を使う家庭なのだろうか、などと考えつつ、今は2巻が出るのが待ち遠しい。

食の不安が取り沙汰されている今の時期に、農業に取り組む少年少女の物語は、ちょっとホッとする。
・・・なんてことを考えずとも楽しんで読めるのだけど。


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登場人物のキャラクターで思い出したのが吉田秋生の楽園シリーズ。
頭が良くて、もとはガリ勉(もしかして死語だろうか)でドロップアウト気味の八軒君、明るくてしっかり者の御影さんのキャラクターが、楽園の猿渡君と黄菜子さんに似ているなーと。
もちろん、東京と北海道、少女漫画と少年漫画と、舞台や背景は大きく違うし、登場人物にしても、八軒君を取り巻くエゾノーの生徒たちは高校進学の段階で目的意識をはっきり持っていて、受験戦争のアンチテーゼみたいな存在だった恭一君や操ちゃんとは違うけど。
30年前は「がんばらなくてもいいんだよ」と誰かが言う必要があったし、今は「がんばるのは恥ずかしいことじゃないんだよ」というメッセージがいいのかもしれない。

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2011年7月 5日 (火)

鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星

先着入場特典の11.5巻を目当てに行ったのだけど、思ったよりも楽しめた。
オリジナルストーリーで少し首をひねる場面もなくはなかったけど、アメストリス及び周辺の国・錬金術・賢者の石・真理の扉という原作の世界観の核になる部分が尊重されていたのは良かった。
それと、エドが練成した列車の扉がエドデザイン、とか。
カフカスをモデルにしたというミロスの人たちの風俗や地下都市がところどころトルコを彷彿とさせるものだったのも好き。
隣国の国名クレタからはギリシャを連想したり。
ただ、東欧及び西アジアのイメージで見ていたので、ミロスの人たちの名前がペドロとかゴンザレスとラテン系の名前だったのにはちょっと違和感を感じてしまった。
架空の世界だから、かまわないといえばかまわないんだけど。
細かいところでは、ジュリアが作戦実行の準備をしている場面で髪をまとめていたのが良かった。
アニメとはいえ、髪がばらばらだと邪魔でしょと思ってしまうので。

不満としては、マスタング大佐の出番が少なかったこと(笑)。
ラスト戦の直後で負傷中という設定らしいけど、焔の錬金術師が医療班扱いとは寂しい。
中尉には見せ場があったのに。
この物足りなさは、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」でチョウ・ユンファの二丁拳銃が見られなかった時に感じたものと似ている。
「出すなら見せ場を作れよーーー」と。
焔の錬金術師といっても火を出す以外の錬金術も使えるのだし、錬成陣を描けば溶岩を止める手助けはできるし、「火を以って火を制す」(by Trick)とかあるだろう。
大佐がテレビ版よりも長身に描かれていたのは良かったですが。
なお、目的だった11.5巻は大満足。


それから、映画公開に関連して「シャンバラを征く者」が放送されたので、録画して鑑賞。
以前CSで見た時は、ハガレンの基本的な設定を何も知らずに見たので、まったく意味がわからなかったけど、今回はなんとかストーリーは追えた。
ホムンクルスの設定が原作と大幅に違っていることに混乱したし、イズミ師匠のキャラクターの違いにそれはそれは驚いたけど。
全体の感想としては、「鋼の錬金術師」の登場人物が、俳優として別のキャラクターを演じた映画、という印象。
映画の設定を、最初パラレルワールドと解釈したのだけど、パラレルワールドというよりは「十二国記」みたいな異世界というほうが似つかわしいかもしれない。
それにしてもエッカートがシャンバラ=アメストリスを征服しようとしたのが意味不明。
理想郷を武力で制圧してどうする。
結末については、重さと苦味を出そうとしたのだろうけど、エドが現実世界に行く必要はないし、したがってアルが追いかけていく必要もなかった。
ウィンリイに思い入れのあるほうではないけれど、置き去りじゃいくらなんでも可哀相だし、兄弟の絆って、二人きりでずっと一緒にいることじゃないでしょ、と思った。
マスタング大佐再登場の場面は非常にカッコよかったけど、軽さを装った原作の大佐のほうが好きかな。

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2011年5月25日 (水)

パリ愛してるぜ

フランス旅行を目前に控え、それどころではないのだけど、じゃんぽ~る西著「パリ愛してるぜ」を読みました。
フランスに行くのだから、パリの滞在記を読むことは時宜にかなっていそうに思うけど、旅行で必要になるのは旅行用会話だったりする。
今ディープなエッセイ漫画を読むのは、一つでも多くの単語を覚えなくてはならない時に長文読解問題に没頭してしまうことに似ている・・・。
それはともかく。

男視点のパリ滞在紀ということで手に取ってみたのだけど、面白ーい。
ヤマザキマリのイタリアエッセイ漫画にも言えることなんだけど、街や人々との距離感とか視点がフラットで、上から目線でもなく、卑屈でもないところが良いです。
ビズ(フランス式挨拶?)に対する感じ方の変遷には思わず爆笑。
手にとったのはパリについての本だからだけど、著者の観察記はパリじゃなくてもきっと面白いと思う。


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フランスの旅行記・歴史・料理の本は読むけれど、パリ在住の日本人のエッセイの類はまったく読んでいない。
なんとなく不穏な(私にとって)なものを感じてしまいそうで、敬遠していた。
・・・つまり、距離感とか視点に不安があったからなのねと、これを読んで悟った。

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2011年5月16日 (月)

イシュタルの娘~小野於通伝 第3巻

2巻途中で心ならずも結婚をした於通が3巻では離縁して京に帰還したのでホッ。
才能を認められて北政所の祐筆となり、いよいよ表舞台へ。
於通が結婚していた一年の間に京もいろいろ変化があって、やんちゃで一本気な好青年だった近衛信輔が失意の果てにグレて傾いた(かぶいた)姿で登場。
それがめちゃめちゃ色っぽくて素敵☆。
左府さん(信輔)失意の原因である秀吉の関白就任の経緯については、これまでは「秀吉がなんだかごり押しして関白になりました」という漠然とした認識しかなくて、戦国から安土・桃山時代って、そういえば武家側からしか見たことがなかった。
そういう意味でも、公家側を丁寧に描いているこの作品は新鮮で面白い。

近衛信輔(信尹)は一流の文化人だっただけでなく、文禄の役では朝鮮に渡ろうと九州まで行ったりとか相当行動的で剛毅な性格だったようで、実際にかぶいていたかどうかはともかく、傾奇者として描いても不思議じゃない人だったらしい。
それでいて豊臣武家政権と利害が対立する公家社会の中枢にいる、歴史の渦中の人物でもあってと、まさに事実は小説より奇なり。
大和和紀なら、ストーリーテリングに都合がよく、かつ魅力的な架空の「非実在青少年」をいくらでも創造できると思うけど、その人が実在の人物に着目してスポットをあてたとなったら、これはもうカッコよくないわけがない。
「歴史好きこそが歴史を面白く描ける」という、このうえない好例だと思う。
於通とともに、左府さんがこの先どんなふうに描かれるのかも楽しみです。

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2010年9月 8日 (水)

イシュタルの娘

大和和紀の「イシュタルの娘~小野於通伝~」第一巻を読みました。
タイトルをちらっとみてSF物かと思ったら歴史物。
それも日本の戦国時代から江戸初期にかけて。
大和和紀の歴史物は、描き方は少女マンガの王道でいながら、着眼点が独特で面白い。
「レディ・ミツコ」、額田王を描いた「天の果て地の限り」も面白かったし、歴史物ではないけれど、「はいからさんが通る」、「紀元2600年のプレイボール」も、時代背景をさりげなく話にとりいれていた。
「イシュタルの娘」も当時の公家の事情が詳細に描写されています。
小野於通は「真田太平記」に重要な役回りで登場したけど、あれは後年の話だったので若い頃の話を読めてうれしい。
織田信長は高橋幸治の信長を彷彿とさせる信長で、最初は怖がった於通が次第に理解していくという描き方も好き。

漫画に限らず、面白い歴史物を描く人って、描き方ももちろん上手いんだけど、主役や狂言回しにする人物の選択眼・歴史の着眼点が優れているといつも思う。
それと、登場人物同士、歴史的事実との距離のとりかたが。

ところで、来年の大河ドラマのヒロインお江は、主演の上野樹里曰く「秀吉や信長にぐいぐい首を突っ込んで興味を持ってひとりで会いに行っちゃったりするような女の子。男っぽいところがあって、戦うところはしっかり戦う、はっきりとした性格」だそう。
http://mantan-web.jp/2010/09/07/20100907dog00m200025000c.html
これってどんな篤姫だ?、というか、オリジナル脚本のお江の設定をどうするかは、脚本家の裁量だとして、原作があって、原作では思慮深さと鬱屈を抱えていた天璋院を出しゃばりお転婆姫にしたことがそもそもの問題だったのだけど、この脚本家は歴史上の登場人物を悉くやんちゃ姫にしないと描けないのだろうか。
上野樹里の演技力なら「乱紋」のお江像も演じられると思うのに、残念。

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2010年8月23日 (月)

それではさっそくBuonapetito!

「テルマエ・ロマエ」が面白かった勢いでヤマザキマリのエッセイコミックも読んでしまった。
「モーレツ!イタリア家族」、「イタリア家族風林火山」、「それではさっそくBuonapetito!」の三冊。


☆「それではさっそくBuonapetito!」は料理エッセイ漫画。
著者の「美味い!」はほんとに美味しそう。
頭で語るのではなく、自分の感覚に正直な感じで、こういう人の「美味い!」は信頼できると思う。
エキストラバージンオイル、チーズ、バルサミコ酢、ポルチーニ茸のこだわりと薀蓄もいちいち頷けてしまう。

で、早速ムケッカ(魚貝のココナッツミルク煮込み)、豚肉のアレンテージョ風、黒豚のバルサミコソース、ツナと白いんげん豆のサラダ、パンツェネッラを作ってみたらどれもイケました。
豚肉のアレンテージョ風は、豚肉とハマグリ(アサリでも良いらしい)が新感覚で、でもとても美味しい。
パンツァネッラは、かたくなったパンを水で戻すというのが目からウロコであった。


☆「モーレツ!イタリア家族」と「イタリア家族風林火山」は、エピソードの面白さもさることながら、著者の「距離感」が好き。
「日本人である自分」と外国との距離のとりかたが絶妙。
家族の話は「モーレツ」なのだけど、住んでいる国との距離感やチャチャの入れ方に限っていえば、玖保キリコの「キリコ・ロンドン」とか村上春樹の「遠い太鼓」の読後感に似ているかも。

ワンステップ階段とか、飛び出す靴箱とか、舅の珍発明の数々には大爆笑。
お姑さんと小姑さんと友人たちが日本を訪れたエピソードは、村上春樹(だったと思う)が「イタリア人の団体にはかかわるな」とエッセイに書いていたことを思い出したりした。
少し前に見たNHKの「世界遺産への招待状~ベローナ」で、「花束の花一本一本にカードをつけて、そのカードを並べて解読すると愛のメッセージになる」というまわりくどく手の込んだプロポーズをするカップルを紹介していて、彼女のほうはほんとにうれしいんだろうか?と思ったけど、「イタリア人は愛のメッセージが好き」というエピソードを見ると、ほんとに喜んでいたみたいである。

著者のプロフィールはずいぶんと波乱万丈なのだけど、それでいて「こんなにユニークで非常識なワタシ」とか「こんなにダメな自分」が売りでないのが好ましい。
それと文章が上手い。
最近のエッセイって、「味がある」とか「個性的」と思うことはあっても、素直に「文章が上手い」と思えることって少ないんだけど。

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