カテゴリー「大河ドラマ・歴史ドラマ」の136件の記事

2024年12月 8日 (日)

極私的大河ドラマ採点

昔のものは思い出補正があるかもしれないけど。

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新・平家物語(1972)★★★★★

国盗り物語(1973)★★★★★
高橋幸治の信長がなければ高橋英樹の信長がベストの信長。
火野正平の藤吉郎も可愛げナンバー1

勝海舟(1974)未見

元禄太平記(1975)★★★★★

風と雲と虹と(1976)★★★★

花神(1977)★★★★★

黄金の日日(1978)★★★★★
主人公の納谷助左衛門には思い入れがなかったが今井宗久(丹波哲郎)・織田信長(高橋幸治)・豊臣秀吉(緒形拳)・石田三成(近藤正臣)・石川五右衛門(根津甚八)がとにかく好き。

草燃える(1979)★★★★★

獅子の時代(1980)未見

おんな太閤記(1981)★★★

峠の群像(1982)★★★★

徳川家康(1983)★★★★

山河燃ゆ(1984)未見
春の波涛(1985)未見
いのち(1986)未見

独眼竜政宗(1987)★★★★

武田信玄(1988)★★★★

春日局(1989)★★★ 
 「おなごとは」と言いすぎ。江口洋介と唐沢寿明は良かった。

翔ぶが如く(1990)★★★★★

太平記(1991)★★★★★
「鎌倉炎上」と「顕家散る」の回は名作

信長(1992)★★★
的場浩司が良かった記憶が。

琉球の風(1993/1-6)未見

炎立つ(1993/7-1994/3)★★★★★
「光る君へ」と「平清盛」をつなぐのはこれ

花の乱(1994)★★★
貴重な室町期の大河だけど、日野富子の出生の秘密とか要らなかった。
細川政元(野村萬斎)と山名宗全(萬屋錦之介)の対峙場面で★一つプラス

八代将軍吉宗(1995)★★★★

秀吉(1996)★★★
視聴者に媚びすぎ。

毛利元就(1997)★★★★
脚本家の個性もあって、いろいろ外連味が強かったけど美伊の方(富田靖子)と杉の方(松坂慶子)が良かった。

徳川慶喜(1998)★★★
主演をはじめ配役は良かったけど、脚本は原作のエピソードを削ってオリジナルを入れた悪い例
明治以降を省略するならタイトルは原作の「最後の将軍」で良かったでしょ。

元禄繚乱(1999)★★★★

葵 徳川三代(2000)★★★★

北条時宗(2001)★★
大河ドラマでは貴重な時代を扱っているが、主役が困った時に困った表情しかしないのはどうか。

利家とまつ(2002)★★
唐沢寿明の無駄遣い。

武蔵(2003)未見

新選組!(2004)★★★★★

義経(2005)★★
義経が平清盛の理念を継承するという設定にそもそも無理があった。
奥州にいる義経が越後で木曽義仲と出会ったり、あり得ない偶然が多すぎた。
神木隆之介の牛若丸は良かったが。

功名が辻(2006)★★
原作無視の恋愛脳大河ドラマ。千代が賢そうに見えなかった。
一豊が明智光秀の死の場面にいたり、黒田長政のエピソードを一豊の話にしたり、面白くもない創作が多すぎた。 

風林火山(2007)★★★★★

篤姫(2008)★
初対面の若者に抜け荷を打ち明ける家老とか、初回からあり得なかった。
家定の王子様設定はそもそも篤姫の存在を否定しかねない。

天地人(39824)★
見どころは小栗旬の所作のみ(髪型は変だったけど)。

龍馬伝(40189)★★
随所で満を持して龍馬の凄さを伝えようとするわりに「えっ、そこ?」の連続。

江(40554)★
おバカ大河の極み。出演者が可哀そう。

平清盛(2012)★★★★
テーマ曲がタルカスなのも感慨深い。
清盛の出生のエピソードは要らなかったが、それ以外は良かった。
メディアが過剰に視聴率を取り上げすぎた。 

八重の桜(2013)★★★★★

軍師官兵衛(2014)★★★★★
荒木村重の謀反をしっかりと描いていた。

花燃ゆ(2015)★
ヒロインが盗み聞きする場面ばかり。
高杉晋作の臨終にいたのも謎。

真田丸(2016)★★★★★

おんな城主 直虎(2017)★★★★★
これぞ良い意味での少女漫画大河の傑作

西郷どん(2018)★★★
西郷も大久保も良かったんだけど、慶喜の描き方で失速。

いだてん(2019)★★★★★
本作で、クドカンは資料を読み込む脚本家なのだなと思って今に至る。

麒麟がくる(2020/1-2021/2)★★★★★

青天を衝け(2021/2-12)★★★★★
明治の徳川慶喜を描いてくれた。

鎌倉殿の13人(2022)★★★★★
源宗章の設定が秀逸。これによって実朝暗殺の公暁単独説・三浦黒幕説・北条陰謀説がすべて成立した。

どうする家康(2023)★
築山殿の平和同盟に唖然。
お市と茶々の初恋の人が家康ってリアリティが皆無なうえにくどい。
北川景子しか得をしなかった大河ドラマ。

光る君へ(2024)★★★★★

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2024年2月26日 (月)

光る君へ

大河ドラマの創作部分にはいろいろと痛い目に遭ってきたし、同じ脚本家の「功名が辻」は失望が大きかったので、期待しつつも恐る恐るだった今年の大河ドラマ。

いやー、面白いじゃないですか。
創作部分の構築とか歴史上の事件への伏線の貼り方とか、これでもかっていうくらい緻密。
五節の舞姫とか打毬とか、当時の行事や風俗の折り込み方、随所にある源氏物語からの引用も良い。
倫子のサロンの場面のBGMがヨーロッパの宮廷音楽風だったりとか、音楽の使い方も素敵。
平安時代の息吹を伝えようという制作側の想いを感じる。

改変とか恋愛設定がイヤだったんじゃなくて、「安易な」改変と恋愛設定がイヤだったのだと改めて思う。
これだけ虚実を混ぜて緻密に構成できる脚本家が「功名が辻」はなんの工夫もなしにヒロインに反戦を叫ばせたり、取ってつけたような話の連続だったのが不思議。よほど戦国時代と相性が悪かったのか。

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2023年12月15日 (金)

脚本と史実と物語と

大河ドラマ「どうする家康」、最終回はまだだけど振り返ってみる。

で、良かったところ。
・松山ケンイチの本多正信
・山田孝之の服部半蔵と服部一党
・溝端淳平の今川氏真
・眞栄田郷敦の武田勝頼
・ムロツヨシの豊臣秀吉(特に晩年)
・北川景子のお市と淀殿
まあ、俳優陣は総じて悪くない。

・三河一揆
・大政所の秀吉への恐怖心
 高畑淳子の演技も良かったし、これはちょっと新鮮だった。
・伏見城の鳥居元忠と千代

好みじゃなかった描き方
・織田信長
 こういう描き方もアリとは思うが好みではない

脚本としてダメだと思ったことの数々
・今川義元の退場が早すぎる
・動機にいちいち恋愛を絡める
 (お市の初恋が家康、茶々の王子様が家康、信長も・・・)
・確たる理由もなく主人公を持ち上げる
・瀬名の平和構想
 信長の楽市楽座は無視ですか。
・後付けの回想の数々
・金ケ崎の走れ阿月
 その後、長篠の戦で鳥居伝衛門のエピソードが出てくることを執筆時にわかっていなかったとしか思えない。年表を作らなかったのか。
・「戦なき世」の連発
 家康のやったことを思えば、これこそ最後の最後に呟くくらいでいい。

脚本家が歴史に興味がないと、こういう話を作ってしまうのか、のオンパレード。
たぶん史料を読んでも退屈だったのだろうな。
近代史だから視聴率は低かったけど、「いだてん」は日露戦争後から東京五輪までの近代から現代の史実をかなり細かく拾っていて、「俺の家の話」における「能」とか、クドカンは資料を読み込むタイプなのだと思った。
柄本佑演じる増野が関東大震災で妻を亡くした喪失感から立ち直るところ、ロサンゼルスオリンピックとベルリンオリンピックの明暗を際立たせた演出など、虚実の織り交ぜ方も良かった。森山未來の一人三役も凄かったし。

「どうする家康」は史実無視もさることながら、オリジナルだとしてもいちいちエピソードが面白くない。
図らずも(図ったのか)時を同じくして放送された「大奥」がファンタジー設定ながらというか、ファンタジーだからこそ綿密に練られたドラマで、だからこそ余計に「どうする家康」のダメさを感じてしまった。
史実からすれば和宮が勝と西郷の会見に出て来るはずもないんだけど、錦の御旗と御宸翰で西郷を変心させる流れが物語として説得力があった。
「大奥」の史実の描き方に全部納得しているわけではなく、慶喜についてはちょっと酷いと思っている。でも、慶喜の行動はあのとおりだし、当時の大奥の人に目にああいう風に映っても仕方がない。
慶喜の行動の矛盾をちゃんと説明するには水戸藩のことを詳細に描かなくてはならないけど、そこまですると大奥の話ではなくなってしまうから、そこは史実を検討した上でのストーリーテリングに必要な取捨選択だったと納得できるのです。

でも、今年の大河はことごとく「取ってつけた」感が否めない。
秀忠の手を汚させない、みたいなのも、去年の鎌倉殿は義時の八重への愛情をこれでもかっていうくらいの描いていたから、八重の子である泰時への思い入れを視聴者が自然に受け入れられるけど、「どうする家康」は瀬名ラブ設定で描いているし、秀忠は初陣でもないのでただただ唐突。

「篤姫」「江」「天地人」「花燃ゆ」もたいがい酷かったけど、脚本家の他の作品に思い入れはなかったので大河そのものへの失望感だった。
でも、今回は「相棒」「リーガルハイ」「コンフィデンスマンjp」の脚本家がこれなのかと、ほんとに「駄目になった王国」の残念さを感じています。

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2023年7月 8日 (土)

歴史離れと歴史そのまま

名探偵コナンのトンチキ回を見てしまって妙な脱力感があったけど、「どうする家康」とか「江」(のあらすじ--早々に脱落してみていない)も私にとっては同じ感覚。

なぜ時代劇を見るかと言えば、衣装とか背景とか、その時代の雰囲気が味わいたいから。
それでも長寿ドラマ化したりすると現代的なモチーフとか、どこかで見たような話が入ったりするけど、そこに目くじら立てるのは無粋。
でも、大河ドラマは違う。
衣装とか背景以外にも、「歴史の面白さ」を大河ドラマには求めている。

歴史自体がストーリーでありプロット。

資料に基づいて「実はこんな近代的な面もあったんですよ」というのは良いんだけど、無理やり現代人そのままの思想や価値観を持ち込まれると興ざめする。

「史実を無視した創作はファンタジーでやれ」とはよく言うけれど、「お花畑平和思想」なんてファンタジーの世界でもNG。
「でも」というか「こそ」NGかもしれない。
登場人物が唐突に平和思想を主張するファンタジーを見たいと思わないから。
最終的に平和を願うのは当然のことで、そこにどう至るかが見せ場なのに直接言葉にしてどうするっていう話です。

2006年にTBSで放送された「里見八犬伝」は終盤、里見義実の平和演説でやらかしていた。
「南総里見八犬伝」は伝奇小説だからファンタジーなわけで、姫と犬の因縁も不思議な玉も怨霊も妖怪も全部「あり」だけど、実在とされる武将(それも、これから騒乱の時代が始まりますよ、という時代の)が戦争反対演説は創作にしてもリアリティがなさすぎた。

で、「どうする家康」です。
瀬名は今川の身内だし、新興の織田よりも格式のある武田を選択するのは腑に落ちるしその路線で描けば良かったのにと思う。
経済圏の統一とか言うなら信長支持のほうが自然だし。
この大河はやたらと女性に語らせるけど、そのわりに物語の序盤で寿桂尼を無視しているし、取ってつけた感じが否めない。
家康の今川時代に、せめて二話くらい使って、寿桂尼を登場させて、義元をもっとじっくり描いていたら、その後の話も説得力があったと思うのですよ。
瀬名と田鶴の少女時代に絡めて描くことも出来ただろうし。
いちいち史実の解釈をこねくり回して不要な話を入れるのは、脚本家とプロデューサーが無理くり「女城主直虎」と違う話にしようとしているみたいに思える。
別に話が被ったところで俳優は違うんだし、同じにはならないのに。
直虎の今川義元は敢えての台詞なしだったけど、そこを野村萬斎が朗々と演じる今川義元をもっと見たかったですけどね。

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2023年4月17日 (月)

どうする家康をどうする

小首傾げながら「どうする家康」を見てきて、はや四月も半ば。
一年の三分の一が過ぎようとしている。
「お市の初恋が家康」に唖然として脱落しかけ、服部半蔵・本多正信の登場で気を取り直すも、側室LGBT、お田鶴に鉄砲隊で再びゆらぎ、今度は「金ケ崎をどうする」の回ですよ。
「いだてん」の昭和と昔を行ったり来たりは全然気にならなかったし、登場人物の一人にスポットライトを当てる描き方は過去の大河にもあって、「新選組!」も隊士のエピソードに一話を当てた回が何回かあった。
なので、「阿月」をクローズアップする手法自体に問題があるわけではないんだけど、唐突な回想場面には違和感のほうが強い。
コンフェイトを阿月のお市への恩義の象徴として描くなら回想は蛇足。

つい来年に期待してしまう自分がいたりする。
来年の脚本家こそ、忌まわしきスイーツ大河の元祖にして本家なのに。
でも、平安時代は色恋が政治に直結していた時代なので、戦国時代とは違うだろうというのが期待の理由。

ところで「天地人」は私の中では脚本レベルが最低ランクだけれど、原案と脚本が「天地人」と同じ組み合わせの土曜時代劇の「かぶき者慶次」が再放送中で、これが意外と悪くない。
やればできるじゃん、という感じ。
そういえば時代劇では名作連発の「真田太平記」の脚本家が「義経」では迷走気味だったし、大河ドラマはやはりちょっと特別なんだろうか。
実家に「太陽」があった三谷幸喜ほどの歴史オタク(大河ドラマオタクでもある)とまではいかなくても、歴史の流れが頭に入っている人じゃないと大河ドラマは書けないんじゃないかと思う。

とりあえず服部半蔵と本多正信、これから登場の西郷の局に期待してみたりして。

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2022年12月20日 (火)

鎌倉殿の13人

鎌倉殿の13人が終わってしまった。
物語はいずれ完結するものだし、それを見届けるのはいつもならただ楽しい。
あまりロスにはならないほうだけど、今回はちょっとロスである。

三谷幸喜は大河ドラマは「新選組!」も「真田丸」も面白かったし、今回も面白いだろうと思ったけど予想以上だった。
史実のダークな部分はそのままに、ダークさも込みで楽しめた。
過去作も個々のキャラクターの掘り下げとか、一話一話の見せ方とかが面白かったけど、今回はそれに加えて全体の構成力が凄かった。

草燃えるでは失意の人として描かれていた三代将軍実朝は、有能で意欲もあって、理想の鎌倉殿になり得る可能性を持ちながら、その聡明さゆえに決定的な地雷を踏んでしまう、という描き方が秀逸。
実朝暗殺の真相については、北条との関係性からして義時黒幕説はあり得ないと思っていたんですよ。
「草燃える」以来三浦黒幕説を支持していたのだけど、この説の弱点は公暁が手を汚してしまうこと。
三浦が公暁を将軍として擁立するつもりなら手を汚させないだろう、と。
で、最近は公暁単独犯説が有力かなと思い始めていたけど、まさかミックスでくるとは。
あり得ないと思っていた義時黒幕説を可能にしたのが源(なんかむかつく)仲章の設定。
長らく「義時と間違われて殺された気の毒な人」と認識していたけど、侍読という立場から実朝に影響力があるのは自然だし、朝廷側の人間として「幕府を京に移しましょう」と唆していても不思議はない。
朝廷と近いくらいでは義時が実朝排除を考える理由付けとしては弱いけれど、幕府ごと京移転を意図していたとなると話は違ってくる。
源仲章の存在で複雑なパズルのピースを見事にはめてしまったのがすごい。
これぞ、歴史そのままと歴史離れという感じ。

「草燃える」(と原作の「北条政子」)では朝廷の不気味さを仄めかすエピソードだったので、頼朝の次女三幡の死についてもう少し描いて欲しかったけど、義時黒幕説のために敢えて割愛したのかもしれず、それならば納得。
三幡の死を毒殺説で描くと、さすがに実朝もあんなに無邪気に後鳥羽上皇を慕うことにはならないだろうから。

ドラマの序盤は「ちょっと無理があるけどガッキー可愛いからいいや」と大目に見る感じで観ていた八重姫が泰時の母という設定が、実は物語の一つの核だったことが最終回を見てわかった。
義時の初恋の人という設定だけなら頼朝縁の八重姫でなくてもいいんだけど、「八重が千鶴丸を失っていた」ことが鶴丸を命がけで助けることにつながり、その後の物語にも大きく関わっていたのだなと。
もう一人の主人公は政子だけど、ヒロインは八重だった。

政争については忌憚なく描いている分、女性たちが概して純情で一途なのも良かった。
巴御前の一途さは言うに及ばず、八重と政子が頼朝と出会ったのは頼朝がまだ流人の時代だし、権勢欲の塊みたいな「りく」でさえ、時政に嫁いだ時点では伊豆のしがない土豪だったわけだから必ずしも欲得ずくではない。
唯一違ったのが義時が執権になってから妻になった「のえ」だった。

政子があまり悪女でなかったのは実は「草燃える」もそうだったので違和感なしです。
卑怯なまでに軍事の天才の義経も新鮮だったし、コミカルでダークな頼朝も良かった。
軍事の天才で政治音痴の義経は既にあったけど、卑怯は初めてです。

そういえば政子は頼家の死の真相を知ったけれど、とどめを刺したのがトウだったことは知らないままなんですね。
それもまた良し。

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2022年5月 6日 (金)

鎌倉殿の13人・承

題材的にも始まる前から面白くなると思っていたけど、予想以上の面白さ。
小栗旬はいつもながら所作と立ち姿が美しく、これまでは受けの演技が続いているけど、今後の変貌が楽しみです。

以下、どうしても「草燃える」との比較が多くなるけど、感想など。

上総介誅殺、「草燃える」の上総介はただただ尊大で無礼な人物として描かれていたので「邪魔者を除いた」という印象だったけど、今回の上総介は人間的で可愛げがあって、非業の死には心が痛みました。

八重の存在について、「平清盛」のイメージを引きずっていたので泰時の母という設定はちょっと意外だったけど、これもありかな。
新垣結衣が八重の「面倒くささ」をとても丁寧に演じていて、わりと好き。
比企の娘が正室となり子をなした後も泰時が後継ぎだったことを思うと母親もそれなりの家だったと思われる。
「草燃える」の泰時の母は大庭の娘だったし、伊東の娘が母というのは納得できる。

「草燃える」の北条政子は永井路子の原作にそって「自らは権力志向のない、周囲に振り回される情緒的な女性」として描いていたけ。
鎌倉殿の小池栄子の北条政子もその路線を踏襲しているキャラクター。
むしろ「草燃える」より御台所としての政子の未熟さがしっかり描かれていて、「北条政子」や「炎環」の政子像により近いと思う。
「草燃える」の岩下志麻も設定や役作りは原作に忠実だったけど、なにせ岩下志麻だし、承久の乱の演説の迫力もあって、なんとなく強い政子像の印象が強くなってしまったのですね。

それから義経。
こんなにとんでもない奴に描いたのは初めて。
「義経」の「清盛の薫陶を受けた」という設定は、義経のその後を考えると無理があった。
「草燃える」で国広富之が演じた義経も軍事の天才ながら政治感覚ゼロの人物として描かれていたけど卑怯ではなかった。
鎌倉殿の義経は、目的を遂げるための手段の選ばなさなど、この義経なら軍事的天才と軍事以外の部分の欠落が腑に落ちる。

ところで三浦透子演じる義経の正室に注目しています。
義経と静御前は吉野で別れるけれど、北の方は平泉まで連れて行き、衣川の館で共に死ぬ。
鎌倉の御家人の娘だから、腰越状の件あたりの時点なら鎌倉に戻ることも出来ただろうにそうしなかった。
北の方が奥州までついていった心境がどんなふうに描かれるのか。

「冠者殿」木曽義高を演じる市川染五郎も眉目秀麗なだけでなく佇まいが美しくて良かった。
お父さんの松本幸四郎はテレビだと表情の演技が勝ちすぎるのが気になるんだけど、市川染五郎は抑制が効いている演技で好きです。

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2022年1月10日 (月)

鎌倉殿の13人

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の初回を視聴。
台詞の現代語と官職呼びの混ぜ具合など「草燃える」を踏襲している感じ。
「草燃える」はオリキャラの祐之が活躍したけど、今回はそういう存在は出て来ないようなので、狂言回しなしでどう描くのかも興味深い。
小栗旬演じる義時の変貌も楽しみ。
「草燃える」で印象的だった阿野全成(頼朝の異母弟で義経の兄)を今回は新納慎也が演じるとのことで、これまた楽しみ。

「草燃える」の原作の一つだった永井路子の「炎環」(新装版)が売れているらしい。
永井路子は独特の癖はあるけど、視点と歴史の解釈は面白いので読む人が増えるとうれしい。
乳母(めのと)の重要性は永井路子で知りました。

一つ心配なのがメディアの余計なお世話の視聴率報道。
「平清盛」と「いだてん」はメディアの報道がマイナスのイメージになって風評被害みたいになっていた。

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2021年12月19日 (日)

青天を衝け(後半)

一橋家の財政再建、徳川昭武のフランス留学に随行、明治維新後は経済界の基盤を築く過程。
大河ドラマ「青天を衝け」は、渋沢栄一の活躍メインになってからは「仕事」を丁寧に克明に描いていて、そこが好き。
(ダメ大河って往々にして「何をしたか」をちゃんと描かない)
尾高家の兄弟たちや幕臣など、他の登場人物もそれぞれに見どころがあった。

渋沢平九郎の死に様が圧巻だったけど、演じた岡田健史が事務所とトラブル中というのが残念。「MIU」も映画の「奥様は取り扱い注意」も良かったし、乗り越えて復活してほしい。
篤二役の泉澤祐希も不肖の二代目の危うさと苦悩を好演。
「白夜行」の亮司の子ども時代を演じたのを見たのが最初だったけど良い俳優になりました。
気づかなかったけど、「功名が辻」では三浦春馬が演じた湘南の子ども時代を演じていたのですね。

そして、ジャーンの徳川慶喜。
前半も良かったけど、隠遁後の諦観に満ちた慶喜の描き方も素晴らしい。
草なぎ剛の慶喜が枯れた中に品があって、ほんとに深みのある慶喜だった。
慶喜については大坂城からの逃亡のイメージから毀誉褒貶いろいろあるけど、それをすべて飲み込んだような慶喜像。。
脚本の大森美香については、以前「里見八犬伝」のラストで里見義実に反戦演説させた前科があるので、そこが少し心配だったけど、慶喜が語る分には違和感はない。いえ語らせてくれて良かった。
朝敵になりたくなかった一心だったか、とにかく戦争を避けたかったか、慶喜の真意がどこにあったとしても、恭順の意を示して謹慎したことで日本を二分する内戦を避けられたことは事実なのだから。

「八重の桜」の「貴人情を知らず」そのままな慶喜もあれはあれでありだけど、渋沢に慕われていたのなら、「青天を衝け」の温かみのある慶喜像も納得できる。

徳川慶喜関連になるとつい愚痴を言いたくなってしまうのが大河ドラマ「徳川慶喜」。
「青天を衝け」を見て、改めて、なぜあんなにも大勢の架空の人物を投入しなくてはならなかったのか。
原作のエピソードを全部入れた上で架空エピソードならまだわかるけど、原作を削って複数の架空のエピソードを繰り広げていたわけで。
め組周辺だけなら市井の話を入れるためと理解できるけど、側近の恋愛ネタが本当に意味不明だった。
で、明治以降のエピソードはカット、と。
ほんとに本木雅弘の無駄遣い。
ドラマのタイトルが原作のまま「最後の将軍」なら、幕末で話が終わるのも百歩譲ってわかるけど、わざわざ「徳川慶喜」にしたのなら晩年も描くべきだったし、描けたはず。
「青天を衝け」が二月開始というハンデがありながらここまで描けたのだから。

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2021年6月12日 (土)

青天を衝け

前半は一橋慶喜が丁寧に描かれていて良かった。
そして、ようやく栄一が表舞台に。
薩摩藩邸に潜入した時に薩摩弁の辞書を作ってしまうところとか、渋沢栄一がものすごく仕事が出来る人だというのがよくわかるエピソード。
そういうエピソードの取捨選択が良い。

前作「麒麟がくる」のオリジナルキャラクターが批判されていたけど、駒も東庵も太夫も、狂言回しとして機能していた。
無駄なオリキャラといえばなんといっても「徳川慶喜」ですよ。
悪い意味で。
司馬遼太郎の「最後の将軍」が原作で、本木雅弘の慶喜、菅原文太の徳川斉昭、深津絵里の天璋院、大原麗子のおもんなどなど、キャスティングも良かったけど、原作の面白い場面をばっさり切って、オリキャラの話がてんこ盛り。
慶喜の側用人の三角関係だのめ組の若衆の母親との再会だの。
「翔ぶが如く」の三木のり平の新門辰五郎が良かったので、親子役を演じたことのある堺正章の新門辰五郎にも期待したけど、脚本的に見せ場がなかった。

「青天を衝け」のホームドラマ部分は個人的にはいらないけれど、不可欠なエピソードがカットされたりはしていないので、そこは満足。
モックンの慶喜も、こういう脚本で見たかったですよ。

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