ゆきてかへらぬ
長谷川泰子をめぐる中原中也と小林秀雄の三角関係で、広瀬すずと岡田将生となったらそりゃ見たい。
でも直近も次に近い映画館も上映していなくて、久しぶりに映画のためにお出かけ。
出かけた甲斐はありました。
衣装も映像も全部好き。
映画の冒頭、京都のモノクロームの街並みにまず惹きこまれた。
そこに現れる赤い番傘の色彩が素晴らしい。
広瀬すずは衣装が全部よくて時代背景にはまりつつも埋没はしない。
そして、中原中也役の木戸大聖がとても良かった。
メインビジュアルの帽子を被った写真が有名な写真に似ていて、容姿を寄せる努力は普通に評価が高いけど、それだけじゃなかった。
泰子との距離の縮め方とか、新しい本を手にした時の弾んだ心、小林秀雄と一緒に朗読する時の楽し気な様子とか、こうであっただろう、そしてこうであって欲しい中原中也。
岡田将生はもう期待どおり。昭和の理知的なインテリがなんて似合う人なんでしょう。
広瀬すずが、演技するという以上に物語とかキャラクターを入れる器みたいに感じたけど、インタビューで語った三人の関係性の分析を見て、役へのアプローチが客観的なのに好感を持った。
脚本はもっと小林秀雄の心情が描かれていたらしいけど、映画には中原中也への愛をより強く感じた。
エンディングの「ユーモア」も映画の余韻と相まって良かったです。
聴いているうちに「ああ、これは中原中也のことだ」と感じるようになっていく。
中原中也は、元々詩の一節がずっと座右の銘なのだけど、このあたりのことを映画で初めて知ったので自分の知識が限定的であったことを認識。
タバコとマントの恋
中原中也訳のランボー詩集
小林秀雄の「中原中也の思ひ出」と妙本寺の海棠
この映画をきっかけに興味が広がっていろいろ復習中。
ランボーの「幸福」は、小林秀雄の「ああ、季節よ、城よ」のほうは知っていたけど、「季節(とき)が流れる、お城が見える」がなんだか浸みた。
「また、見つかった、何が、永遠が、海と溶け合う太陽が」は小林秀雄訳が好きだけど。
本当はもっと映画を観に行きたいけど、なかなか事情が許さず、迷走して文豪ストレイドッグスを読んでしまった。
面白かったので後悔はしていない。
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